夜這い | ナノ

冬の夜の微睡みが好きだ。
温かく柔らかい布団にくるまって、夢の淵を辿る。

そういうときは決まって三蔵がするりと入ってくる。
音も立てないなんて、正直慣れてるなんて思ったこともあったが、今では少し違うと思っている。
何と言うか、常に癖付いてしまっているのだ。
彼は放浪生活の中にそういった幾つかの癖がついていた。

気付かない振りをして身体に毛布をぴったりくっつけると、それを縫うようにして三蔵の手が泳いでくる。
まず心臓。鼓動を確かめて、それから腰に手を回す。
ゆっくりと身体を添わせるように覆い被さってきて、耳にひっそりと声を落とすのだ。

「…悟空、」

低い声。ズクッと耳から基幹を貫いて腰にくる声で、普段だったら絶対に含ませない甘さまで伴って。

そうして、耳をなぶる。
舌先でゆっくりと、わざと息がかかるように。

そうして堪えきれなくなったところを見計らって、一気に襲いかかってくる。


「――――…寝てるときはやめて欲しい」

散々好き勝手されたあとに声だけで不服を申立てても、暖簾に腕押しだ。
悠々とタバコを吸って満足している。

「目ぇ覚めたし…今度から寝てるときにしようとしたらなぐるかんな。」

「殴られる前に縛ってやるよ」

にやりと笑った三蔵には、冗談は一ミリも含まれていないと思う。
脅迫だ、と悟空は思った。



よ:夜這い



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