冬 | ナノ
「三蔵、外寒い。」
耳と鼻を真っ赤に、金色の目をキラキラさせながら悟空が駆け寄ってきた。
思わず抱き止めて、その衣服までが冷気を纏っているのを三蔵は指先で感じる。
真っ赤な耳に手をやると、そこも氷のように冷たかった。

「雪は降っていなかったのか」
「降ってたけど積もってない。」
「手袋はどうした」
「部屋に忘れた」
「マフラーは」
「木のぼりしてて風に吹かれて無くした」
じゃあ何故外に出た。喉まで出掛けたが口には出さなかった。そんなこと悟空に聞くだけ無駄に決まっている。
悟空は大雨でも外で遊ぶのだ。三蔵は賢明だった。

「三蔵仕事終わったか?」
「終わったように見えるか?」

机の上には書類の山と煙草の吸い殻の山が鎮座している。

「見えね―。」
「なら部屋に先に戻ってろ。」
「ん、分かった」
「…、…」

聞き分けがいい。
いつもなら「嫌だ三蔵も一緒に」とか「ここで待ってる」とか言って駄々をこねる。ここまで言わなくても最低「え―」とつっかかったりするのに。
今日の悟空はあまりにも素直だった。

「何企んでる」

つい聞いてしまった。
振り向いた悟空はふわりと笑って。

「三蔵に冬を届けにきただけだから」

自慢そうに三蔵に告げると踵を返した。
指先に感じた冷たさを三蔵は思い出した。
同時に胸に宿った小さな思いも。
そして何もなかったような振りをして煙草に火をつけた。
子供には敵わない。多分、一生きっと。


ふ:冬





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