駆け引き | ナノ
与えてもらうことを当然となんて勿論思っていなかった。
ただ、少しだけ―――自分には思い上がっていた部分があったのかも知れない。

初めて触れた手はとても温かで、まるでそれは自分のために存在してくれているようで、ひどく安心したことを覚えている。
当然ずっと昔のことだ。
あの頃も今も自分は三蔵という人間が好きだった。いくら月日が経ったとてそれは絶対に変わることはない。

ただ、あの時と違うのは―――。


銃で節くれだった細い長い指はそこにあるのも烏滸がましいほど神聖で美しかった。
ともすれば火傷をするのではないかと云うくらい、熱い手だった。

悟空はそれをそっと持ち上げて自らの眼前へと捧げる。
希望も何もクソもなかった。
ただ判らせてやりたかったのだ。
自分がどんなに、彼に愛されたいのかを。否、彼を愛しているのかを。


何人も殺してきたその指先は目眩がする程白かった。
罪にまみれていても三蔵の輝きは消えることはない。神々しいばかりのオーラが出ている。

意を決して口を開ける。
次に何をされるか、彼はわかっているのだろうか。
ちらりと顔を伺うとこれでもかと言わんばかりにポーカーフェイスを決めこんでいた。
何の色も映さない紫がすっと細められる。

肯定だと都合よく解釈して悟空はその指先を口内へと招き入れた。
平たくした舌で人差し指と中指をそっと迎える。
僅かに指が動いた。
また三蔵を伺うと、紫が少しだけ濃くなっているような気がした。
気を良くした悟空は更に指を舌で愛撫した。
柔らかに、キツく吸い上げる。また舌先でちろちろとなぶる。
最後にべろりと舐めあげて、指を解放してやった。

舌が離れたのを確認して、三蔵はやっと口を開いた。

「何がしたい」
「セックス。」

それだけ呟くと呆気にとられた顔の三蔵に悟空は飛びきりの笑みをくれてやった。

「冗談だよ」



(体は要らない。欲しいのはただ心だけなのです。)



か:駆け引き

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