上司 | ナノ
『申し訳、ありませんでした』


思えば三蔵が悪い訳では無かった。
今回の取引で軽いミスをしたのは一番下の新入社員だ。
入社したての新人が仕事に慣れていないのはしょうがない。
だがしかし、どんなに些細なミスでも責任を取り頭を下げるのは上司である自分で。

『玄奘部長、取引先からお電話です。』
ミスの報告と共に掛かってきた電話に、溜め息と同時に煙草をもみ消し。

『…今すぐそちらに伺うと伝えろ。孫、同行しろ』

大地色の髪の部下の「はい」という返事と笑顔を横目で見、上着を羽織ると、銀のキーを掴んだ。
そして今に至る。
取引先の応接室に通され、現れた部長に当然のように三蔵はすぐに頭を下げた。
『玄奘さんに頭を下げてもらったのなら』と、取引先の部長も少し困惑したようにはにかんだ。

『以後、この様な事が起こらないように致します。本当に今回は申し訳ありませんでした。』

もう一度、三蔵はその金色の頭を下げた。





「今日の部長、頭下げすぎでした」

帰りの道。
助手席のシートに体を埋めた三蔵直属の部下である悟空は少し苦笑しながら口を開いた。
ふん、と鼻を鳴らした三蔵に続けざまに。

「でも、素敵でした」

そう囁けば。

「…ハッ……」


如何にも可笑しそうに笑う三蔵。
しかしうっすらと頬を少し染めた横顔を、悟空の眼が捉えた。

「始末書、週末までにお前が提出しろよ」
「…部長、勘弁して下さいよ」

笑い合う二人を乗せて銀色の車は走っていく。


“『私』の真ん中に『俺』が帰ってくる”





end



大好きCMシリーズ(笑)
いや、マークXのCMが大好きで。女の人の台詞を是非とも悟空に言わせたく…!
ちなみにミスした新人とは悟空ではありません(笑)
ちなみに台詞はうろ覚えです(笑)



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