無修整 | ナノ
「誕生日、おめでとう」
そう言って差し出された花を、三蔵は受け取るでもなく怪訝そうに見つめた。
花は真白いコスモスだった。
赤い紐が茎にそのまま結わえてあり、一目で悟空が用意したものだと見て取れる。
「何の真似だ」
にべもなく告げれば、金色の眼が一瞬揺れた。動揺が見て取れる。
思わず口端が歪む。
気付いていない悟空は続けた。
「三蔵に、何かあげたかったんだけど、俺金ないし。花をあげるもんだって聞いたから。」
「だからこれか」
「うん」
「そうか」
手を花へと伸ばす。
ちらりと悟空を見れば、受け取ってもらえることへの喜びに顔が綻んでいた。
――――途端、黒いものが胸をよぎる。

受け取る寸前、三蔵は悟空の細い手を払った。
金色の眼が見開かれ、衝撃で悟空の顔が強張る。
花はゆらゆらと地面に落ち、それを三蔵は追い討ちとばかりに踏みつけた。
「余計なことすんじゃねぇ」

微笑うな。
花を受け取ってもらうぐらいで…そんな少しのことで喜ぶ悟空に何故だか無性に苛立つ。
そんなに無垢に己を慕って何になるというのだ。

悟空へと目をやれば、意志の強い金眼とかち合う。
ただし、その目には大粒の涙が溢れていた。
「もう行け」
そう言うと三蔵は踵を返す。
何歩か歩いたところで、悟空が走り去る音がした。
完全に足音が消えるのを待ってから、三蔵は先程の花へと歩み寄る。
自分で踏みつけたそれを大事そうに拾い懐に入れた。
まだ知らせない。あんな淡い想いしか抱いていない悟空には、知らせるべくもない。
大切なのはただ一つ、狂気のようなこの想いだけ。
早く堕ちてこい、ここまで。
懐の花を強く握り締めて三蔵は笑った。


無修正の歪んだ愛情




end

2009年三蔵生誕記念
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