2 | ナノ


久しぶりに空に買い物に付き合ってほしいと強請られて喜んで行ったら本気で見たくない金髪野郎がそこにいた。
そんな最低な10月31日日曜日、本日は晴天。
場所は駅ビルの一角、時計広場とよばれる場所。

「空おっそいな―…」
「……」
「で、アンタがなんでこんなとこ居るの。死ぬほど似合わないから帰りなよ」
「ざけんな。俺のほうが先約だ」
「アンタこそふざけんなよ、俺のが先約だっての!」
「アンタとは何だ。血を分けた双子の兄貴の恋人つかまえて。」
しらっと言い放つ三蔵。ああマジでコイツ殴りたい。
いや、殴るか。一発殴っとくかこれ。宜しければ記憶飛ぶぐらいグチャグチャにしとくか。
……落ち着け、俺。
確かに空に31日にここでこの時間と言われた。うん、間違いない。
ということはダブルブッキングか。
はいはいそ―ですかそ―ですか。
よりによってこの男とブッキングですかそ―ですか。
いっちょ空に会うまえにボコボコにヘコましてやろう。
この金髪ブタ野郎ってこれ古いな。
くるっと三蔵に向き直って、俺は軽く息を吸うと一気にまくし立てた。
「言っとくけどね―俺アンタのこと空の恋人だなんて絶対認めないからね!!徹底的に邪魔してやるんだからなこの変態!クズ!チンカス!あ―ヤダヤダ空ってばこんなエセ外人のどこが好きなんだろ―。」
「顔と性格と体。」
「……は?」
「オマケに唇、だそうだ。これで満足か?」
ベコベコにヘコむと思った三蔵はまさかのアイアンハートでした。
紫の目が勝ち誇ったように細められて、俺はおもわぬカウンターを食らった。
なんか、岩で頭をガンッてやられたぐらい痛い。

ああ、この金髪は俺が夢にまで見ても我慢を強いられている空に触ってるんだ。
触れて、キスして、そしてその唇で愛を囁いているのだろうか。
そのとき空は、優しく笑うんだろうか。誰でもない、俺以外のコイツの目の前で。

「〜〜〜〜〜っう」

急に胸が詰まって俺は下を向いた。
オレンジと薄い青のタイル、それから三蔵の靴が見えた。

スニーカーの爪先までこの男が心底羨ましい。
目に薄い涙の膜まで張ってきた。
ヤバい、帰ろうかな。

「オイ、どうした。腹でも痛ぇのか?」

空気すら読まずに三蔵が声かけてきやがった。
もうほっといてくれ!そう言おうとして顔を上げると、三蔵の顔が目の前にあった。
…はっとする程綺麗だった。
とくに目。あ―こいつ紫色の目してやがる羨ましい。
ことを考えてるうちにドンドン三蔵の顔が近づいてきた。
唇との距離わずか20センチのところで俺はやっと口を開いた。

「何だよ黙って気色悪い。つ―か近付くなよ」
「いや…、やっぱりお前ら双子なんだな。一瞬悟空と間違えてキスしそうになった」
「……は?」
晴天の霹靂。誰が誰と間違えてキスしそうになったって?
混乱する俺に、三蔵はトドメをさすように言いはなった。

「お前の涙目、ソソるな」

「――…最低…。」
殺す。こいつマジ殺す。
必殺回し蹴りを食らわす寸前、後ろから慌てるような声がかけられた。

「ごめんごめん三蔵、聖!!なんか事故があったみたいで遅れたよゴメンな!……て、アレ?聖?どしたんだこの空気…?」
「空!この男俺まで口説こうとしたよ!?空という恋人がありながら!!もう別れろ!今すぐ別れろ!!」
「誤解するような言い方すんじゃねえ!誰がテメェなんか!」
「え?え?聖どうしたんだよ落ち着けよ」
「どうしたもこうしたもね―よ!つ―か死ねよ三蔵―――!!!!」


俺のむなしい叫び声は時計広場の彼方へと吸い込まれて小さくなった。
俺の最悪なハロウィンはこうして幕を閉じた。





2010年ハロウィン!

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