今夜も眠れない 1 | ナノ



産まれたときから今までずっと、俺は報われない恋をしている。

「な―、聖、聞いてる?」
「ああ、聞いてる聞いてる。」
「なんだよソレ。聞いてねぇだろ絶対」
「い―や、聞いてるね。三蔵がバイト帰りに待っててくれたってノロケ、今ので確実に5回目だよ」
「え…、そうだっけ?」

黄金色の目をクリクリさせて笑う。
そっくりな筈のその笑顔がかわいいなんて、俺は随分おかしいに違いない。
双子の、それも兄弟に俺は想いを寄せている。
母親の胎内で恋をしたんじゃないかとそう思う。
でも悲しいかな、俺の一方通行で、片割れの空には既に恋人がいる。
一緒に通っていた塾で知り合った、すんげえ美人の先輩。
空は面食いだと心の底から思った。

「で、俺にノロケてる間にその三蔵と会う時間になってんだけど、空その格好で行く気?」
「うん。なんか変?」

変ではないけど。
夏ど真ん中なんだから仕方ないかもしれないけど。

「ノースリに短パンはね―。誘ってるって思われても仕方ないんじゃない?」
「え!?そ―かな、俺そんなつもり…」
顔を真っ赤にする空。
うん、空はそんなつもり微塵もないだろうね。その顔見れば分かるけど。
たった3日前に三蔵に迫られたと、空は俺に真顔で相談してきた。
16年気持ちを押し殺していた俺はどっちかっていうと三蔵の気持ちが分かる。
でも怒りのほうが遥かにデカかった。
三蔵の野郎、殺す。てか再起不能にする。


ピンポーン。

「ほら、到着だよ。俺出るからせめて上はTシャツにしなよ」
「お、おうわかった。聖ありがとう」

ノースリのシャツを脱ぎ捨てて空は慌てて自分の部屋に戻っていった。
俺はため息をつきながら階段を降りて玄関へと足を進める。

「ハ―イ」

ガチャ、カラカラ。玄関の扉を開けると仏頂面の金髪がこれでもかと尊大な態度で突っ立っていた。
イライラするなぁこいつ。
三蔵もそう思ってるんだろう、初めて会ったときから俺と三蔵はなんとなくお互いを敵同士と認識している。

「悟空は?」
「今お召し替えの最中ですのでどうぞそちらで待っててクダサイ。」
「冗談だろ。上がらせろ」
「冗談だろ。外で待ってろ」
「……」
「……」

睨み合うこと1分半。
ドタドタと階段を降りている音がして空が大慌てで出てきた。
も―そんなに慌てなくてもイイのに。

「お待たせ三蔵、…アレ、なんでそんな所に立ってんの?」
「三蔵は日焼けしたいらしいよ」
「オイ」
「変な三蔵、こんなに暑いのに」
「ハイハイ、も―いいから行っておいでよ空。」
「あ、うん」

でもやっぱり空、三蔵のこと好きなんだろうな。
三蔵の顔見たらこれ以上ないくらい笑顔になってる。
ちょっとだけ悔しくなった俺は、靴を履いて手を振る空の頬に軽くキスをした。
「三蔵には気をつけなよ、空。エッチしたらお腹めっちゃ痛くなってかき氷もスイカも当分食べれなくなっちゃうんだからね」
「え、ええ!?」
「オイ!!」

焦って真っ赤になった空と違う意味で焦る三蔵を見て、俺はとびきりの笑顔でじゃ―ね―と玄関を閉めた。

かき氷もスイカも空の大好物。これで夏の間だけは空に手は出せない筈だ。
ザマーミロ、三蔵。

少しだけスッキリした俺はアイスを取りに冷蔵庫を目指す。
まだまだ、簡単に空はアンタにやるもんか。
次なる三蔵への嫌がらせを構想しながらアイスにかじりついた。
ついでに三蔵が日光に頭皮をヤられることを願いながら。

(あんなに幸せそうに笑う顔がチラついてどうせ今夜も眠れない。)



end


2010年9月9日小説。

三空←斉天でした。
なんていうか、この小説の斉天のイメージ、BSRのサスケだった…
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