キャロル | ナノ




「三蔵―!頼むから動けよ―!!」
「寒い。却下」
「寒さに弱いトナカイなんかどこにいんだよ、さっさとう―ご―けッ!!」
「嫌なこった」
雪が降りしきるここ、極彩色の赤と緑で彩られたサンタクロースの国。
喚いているのは悟空。サンタクロース1年目の新人サンタだ。
厳しいテストをくぐり抜け、漸くサンタクロースの免許を貰い、初めて専属トナカイを付けてもらった。
そのトナカイが寒いとのたまっている三蔵だ。
金色紫目の美しい外見とは裏腹に、口は悪く性格も悪い。
本来ならばパートナーとなるトナカイには使用期間が与えられるのだが、見た目が綺麗なものに弱い悟空は三蔵を見た瞬間にパートナーは三蔵がいいと返事をしてしまったのだ。
「一度決めたら簡単には変更できませんよ?」と、先輩サンタの八戒の言葉もそこそこに、悟空は三蔵の額にキスをした。

今日は12月23日。年に一度の仕事を明日に控え、悟空は配るプレゼントの確認を終わらせた。
そのプレゼントを持っていく子供達の家を確認しに行こう、と三蔵に声を掛けたのだが、三蔵の返事はNOだった。
そして今に至る。
「大体さぁ、サンタの僕になるって分かっててよく専属トナカイになろうと思ったよな!」
「サンタとパートナーになればかったるい練習もしなくて済むし専用の家も貰えるんだ、ならねぇ手はねぇだろ。大体使用期間をせずに直ぐにパートナーにするっつったのはてめぇだろうが。」
「うっ…」
「どーせ見てくれだけ気に入ってパートナーにしたんだろ―が。」
「うぅ…」
しなしなと力無く下を向く悟空。
的確に的を得ている。
三蔵は性格が悪いが頭がいい。特に記憶力は抜群だ。些細なことでもよく覚えていて、悟空をドキリとさせるのだ。
「煙草1カートン」
「う……うん?また煙草?」
「煙草1カートンよこせば、下見に連れて行ってやるよ」
「………わ、分かった…」
そして三蔵はトナカイのくせに愛煙家である。
初めて三蔵に煙草をくれと言われた時にはどうやって煙草を吸うんだろうと頭を捻ったほどだ。
サンタのパートナーになったトナカイは人型になれるようになる。
サンタとパートナーになる際に行う儀式―――即ちキスなのだが、その際にサンタの魔力がトナカイに流れ込むらしい。
実際トナカイが人型になるのは、サンタの手伝いをするためなのだが、三蔵が人型になるのは専ら煙草を吸うときだ。
人型の三蔵は目眩がしそうなほどかっこいい。
トナカイの三蔵も好きだが、人型の三蔵も好きだと、悟空はこっそり思っている。
「煙草は体に悪いから、あんま吸わないほうがいいんじゃねぇ?」
「うるせぇ。俺の数少ない楽しみを奪うな。嫌なら他のトナカイ探すんだな」
そう言うと完全に三蔵はそっぽ向いてしまった。

こうなってしまっては悟空が折れる外はない。三蔵は意地っ張りでもある。
「じゃあ1カートン、下見のついでに買うから早く行こう?俺、明日が初仕事だから…絶対失敗したくないんだ……」
「……」
俯いた悟空を三蔵はちらりと横目で見た。
悟空がこの初仕事にどれだけ力を入れているかは三蔵が一番よく知っていた。
今年のプレゼントを配る子供のリストを貰ったときの嬉しそうな顔。
子供一人一人のためにプレゼントを必死に選んでいたのも知っている。
俯いた悟空の頬に三蔵は静かにキスをした。
「…え」
「オラ、さっさとソリに乗れ」
「三蔵、今の何…わっ!!」
悟空を角でソリに押し上げると、三蔵はさっさとソリを引いて空へと駆け上がった。
既にサンタの国は眼下へと小さくなっている。
三蔵は脚も速い。
冷気が、三蔵に触れられて高揚した頬をくすぐっていった。
シャン、シャンとソリに結わえ付けられた銀色の鈴が鳴る。
同じように高鳴る胸を、悟空は真っ赤になって押さえた。





メリークリスマ―ス!
とある漫画の影響で獣×人間に萌えまくりです。
これから書けたら続編書くぞ―!という心意気です。書けるといいな(いきなり低姿勢/笑)
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