門限破り | ナノ







門限破り




初めて出会ったのは飛び乗った電車のドアのそばだった。

もうすぐ夜9時、車内はそれなりに人がいて皆一様に揺れに身を任せている。
久しぶりにこんなに早く電車に乗るな。
遊び友達の悟浄に知れたらマジびっくりされるだろうけど俺だってまっすぐ家に帰りたい時だってある。
心地良い電車の音に耳を傾けながら、何をするわけでもなく陣取った扉の前で車窓をぼんやり見ていた。

―――――ガタンっ

「わっ」
急に電車が大きな音を立てて揺れた。と同時に、隣の子に肩をぶつけてしまった。やべ、ぼーっとしすぎた。
「すみません」
「…ああ」

うわ。
隣の人、ぜんぜん気付かなかったけど超キレ―。
やべ―俺自他共に認める面食いなのに。
隣の人、「ああ」だってさ。声もマジかっこいい。うわ―。近くで見ると目めちゃくちゃキレ―。紫だ。
髪もかっこいい。金髪サラサラ。
なんつ―かこういう人のこと美人っていうんだろうな。うん。
俺はその人にすんごい興味が出てしまった。

「お兄さん今帰り?」
「…ああ」
「ふーん。俺も。今日久しぶりにこんな時間に帰ったんだけど、アンタに会えたから良かった。」
「……はあ?」
「つ―か日本語上手いね。日本人?」
「…日本人に見えるか?」

美人のお兄さん、初めて俺を見てくれた!
やべ―かっこいい。
日本人に見えないけどこれっぽっちも。

「ハーフ?」
「父親がな。」
「へぇ―、クォーターか。かっこいいね。いいな―、金髪。俺も染めようかな―。」

それからとりとめのない話ばかり。
なんかでも、この人とずっと一緒にいたいかも。


「今度遊びにいこうよ」
だから普通に誘った。したらお兄さん、少し複雑そうな顔して、

「…門限があるから、駄目だ」
「マジ?」

今時めずらし―。
俺16だけど「今日中」に家に帰ることが珍しいのに。すげ―。
でも俺はめげない。

「門限何時?」
「9時」
「じゃあ門限ない日!ある?」
「ない」

即答かよ。ヘコムよ。

「じゃあさ、門限破ろうぜ。」
「は?」
「もっと遊ぼうよ、外に出たらもっと楽しいから」
「……」
「アンタの行ったことない世界に連れてってやる!」
「…、ふ」


やった!笑った!
思った通りめっちゃキレ―。

「なぁ俺悟空。あんたは?」
「三蔵」
「行くぞ三蔵!」

そう言って、じゃあ連れてってもらうかって不敵に笑う三蔵の手を取った。

そうこなきゃ!この世の中、君の知らないことばかりだから。
そこから心の中ごと、君とともに夜の中。








End

ケ/ツ/メ/イ/シの門限破りから。
だいすきだこの歌。
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