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その綺麗な人はいつも歩いていた。

都内の高校へ通う俺、悟空。剣道部。ちなみに高校3年生。
高校へは徒歩で15分。途中に交差点があって、しかも国道にかかってる道だから大概いつも引っかかる。
そこで信号待ちをする時間、昔は嫌いだったけど今は一番楽しみになってる。
何故ってそこに――――好きな人がいるから。
最初に会ったのもこの交差点で信号待ちしてる時だった。
すんげえ金髪の綺麗な人が向こう側で待ってて、走る車越しに目があった瞬間。
俺の体内の水分は一気に沸騰したんじゃないかってくらい熱くなった。
あの人が欲しい。単純にそう思った。
信号が赤から青に変わって、その人がこっちに歩いてくるのを、俺はただボーっと突っ立って見てた。綺麗すぎて見とれた。
近くに来て初めて男だって分かった。
すれ違う瞬間少しだけ香水の匂いがした。不覚にもそれだけで勃った。
それから今日まで。
毎朝その人とすれ違う。
俺はその人をガン見。その人が俺のことに気付いたのがガン見し始めて3日目。
声かけられたのが4日目。
すれ違う瞬間「何みてんだ」って言われた。「アンタ綺麗だから見てた」っつったら無視された。へこんだ。

5日目は俺から。
「名前教えて」つったらまた無視された。もうへこまなかった。伏し目がちなその人の睫の長いこと。
6日目は再チャレンジ。「名前教えて」っつったら「てめぇから名乗るのが筋だ」って言われた。
喋ってくれた嬉しさで俺はその場に棒立ちになった。トラックにひかれかけた。
7日目は今日、決戦の日。
俺は通学途中にある花屋で花を購入。
あの人は花なんて多分好きじゃなさそうだけど、告白には花がセオリー。
俺はその交差点の横断歩道の前に立ち尽くしていた。
あの人は……いた。同じ時間に歩いてくるところをみると結構神経質。今日も綺麗。

信号は赤から青へ。
いざ、決戦の時。
俺は歩き出す。その人の前へ。
横断歩道の中程、その人とかち会った。
やっとその人は顔を上げて、少しだけ眉根を寄せる。ムッとした顔。
右へ、俺も右へ。
左へ。俺も左へ。
するとその人はするりと右へ退いて俺を交わした。
素早い。でも負けねぇ。
「俺、悟空!俺じゃダメ―!?」
振り向いて声の限りに叫ぶ。その人は驚いたように目を見開いて、それから少しだけ笑った。
「…、生意気」
笑った!やった!俺は畳み掛けるように叫ぶように聞いた。
「名前教えて!」
「三蔵だ。サル」
「サルじゃねぇ―!!」
無情にも信号は赤に変わった。俺は反対側へ走る。三蔵はその反対側へ。
俺と三蔵の間を穿つように車がスイスイと走る。
三蔵はもう俺を無視してスタスタ歩き出している。
でも名前教えてもらった。で名前呼んでもらった!
俺は足取り軽く学校への道を急いだ。
忘れられない夏の始まりの日。




End




悟空がガッツリ肉食。三蔵草食。

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