34 | ナノ
おかしな事は楽しき事也。



【Harry go round 3】




カチッ…シュボッ…
「なあ三蔵、俺…」
ふー…
煙草の匂いと味は確実に自分が現実に居るということをしらしめる。
そっと悟空に眼を移した三蔵は未だに理解し難い現実を受け止めきれずに溜め息となって口から溢れた。
人生、何があるか分かったもんじゃない。何故、一体何故。
三蔵の頭の中はせわしなく動き回っていた。
起き抜けにこんなに考えたこともねーな、と苦笑し、紡がれた灰を灰皿へと落とす。

「で、三蔵。俺、何で女になったんだろう?」
「…取り敢えず上着を着ろ。話はそれからだ。」

胸を惜しみなく露わにする悟空に上着を投げ、三蔵は右手をこめかみに当てた。
夕べこの小猿に何があったというのか。
普通に5食喰っていたし、自分の寝台に毛虫を入れて悪戯もしていた。夜の営みも行った。
女へと変貌する原因もなければ、普段と変わる所は何一つ無い。

「なあ三蔵。俺何で女になったんだ?」

もたもたと上着を羽織って悟空は深く溜め息を付いた。

「俺が聞きたい位だ」
「だよなあ…」

俯く悟空に眼をやれば、三蔵の眼にえらく官能的な姿が飛び込んだ。
うっすらと色づいた口唇。艶めく髪はさらさらと悟空の肩から滑り落ち、豊満な胸に流れる曲線を描いた。

「…」

男の理性が負けやすい朝にこの姿は厳しい。
ごくりと喉を鳴らした変態…基い三蔵は煙草を灰皿に擦り付け、ゆっくりと悟空に近付いた。


「どしたの?三蔵」
にじりよる三蔵に悟空は小首を傾げる。
その姿は逆に三蔵を煽る形となり、最早野獣と化した三蔵にすぐに組み敷かれた。

「うお!?」
「色気の無ぇ声出すんじゃねえ」

ちゅっと首筋に口唇を寄せ、三蔵は悟空の胸に手を伸ばす。
シャツの上から撫で上げられ悟空の息は上がる。
弾力を確かめるように掌を動かせば、艶やかな口唇から嬌声が紡がれれた。

「ふ…ぁ…ちょっと三蔵…」
「何だ?」
「…ッ!ど、どこ触って…」
「うるせぇ。調べてるだけだ」
「アッ!」

おかしそうに口を歪める三蔵。ちょっと違う朝の風景は、艶めかしい声によって彩られた。
その後寺院では、嬉しそうに女物の下着を買い求める三蔵と脱力しきった悟空を見たとか見なかったとか。





愛に全てを




【Harry go round 4】




「ブラジャーが要るな」
「ブラジャー?」
「ああ」
「何それ?」
「簡単に言えば胸当てだ。下着も買わなきゃならん。昼から街に出るから支度しておけ」

そう告げてすたすたと出ていった最高僧を見つめながら首を捻ったのは女歴1日の悟空。
昨日目が醒めると変貌していた女の体にも徐々に慣れ、着替えていた瞬間に三蔵の口からブラジャーを買う、と告げられた。
ブラジャー。
聞き覚えのない言葉。
胸当てと言われてもそんなものは聞いたことも勿論着けた事も無い。
まあ三蔵は分かってるみたいだしいっか、といつものようにチャイナ服に着替え三蔵を待った。
それが最大の間違いになるとも知らずに。
正午を告げる鐘の音が鳴り程なく私室に帰ってきた三蔵と昼食を取り、着替える三蔵を急かしながら二人で街へ向かった…が。


「いらっしゃいませ」


初めて見た女物の下着屋に悟空は速攻で背を向けた。

「おい猿、ここに入るんだよ」
「え?だってここは女の店じゃん」
「アホ。だから来たんじゃねぇか。お前は女になったんだ、何の問題もねぇだろ」

涼しい顔で入っていく三蔵に悟空は溜め息を漏らしながら続いた。
恐る恐る店内を見渡せば…あるわあるわレースの山。
美しいボディラインを象ったマネキンが着けている下着を興味津々で触った。

「これ…俺が着けるのか?」
「それがいいのか?」

何の躊躇も無く三蔵は近くに居た店員を呼び寄せ試着を促す。

「そちら新商品なんですよ。レースが見事でしょう?」

にこりと笑いかけられた悟空は半ば泣きそうな顔で微笑み返した。

「サイズの方は?」
「え?わ、わかんな…」

もごもごと口を閉ざす悟空を不思議そうに見詰めた店員は優しく微笑む。

「ではお計りしましょう。試着室へお願いします」
「ああ、あと何点かこいつに見繕ってやってくれ。俺は外で待っている」
「え!?さ、さんぞ」
「しっかり選べよ」

半泣きになる悟空の頭をくしゃりと撫でると三蔵はすたすたと出て行った。
残された悟空は三蔵の背中と掌のゴールドカードを交互に見詰める。
ゆっくりと振り向けば微笑む店員と目がかち合った。


「さ、お客様こちらへ」
「…さんぞー!!」




to be next…


ウキウキ下着選ぶ三蔵様はやはり書けません!!期待してくださった皆様スイマセン(平伏)続きまーす。次回ブラジャーごくたん降臨☆鼻血天国三蔵の巻(大嘘)






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