032 年齢制限
2015/01/18 19:58
「俺、これ観たい!」
「ダメだ」
悟空が差し出したパッケージを一瞥すると、三蔵は手も触れずに視線を逸らした。
長かった梅雨が終わりに差し掛かった、初夏の休日。久し振りの日差しを鬱陶しく感じカーテンを引いて午睡を貪っていた三蔵は、5つ下の幼なじみの襲撃を受けたのだ。
どこかに連れて行くなんてとてもじゃなかったので、レンタルDVDを借りて観る、ということで悟空を説き伏せた。
そして、日も暮れかかった現在、こうして肩を並べてレンタルDVDを選んでいた。そして冒頭のセリフである。
悟空が持ってきたDVDは、少し前に話題になった邦画だった。その内容の恐ろしさ、何より卑猥さに年齢指定が設けられたものだ。
一度拒否されたそれを、悟空は負けじと押し付けてくる。
「なんでだよ!」
「猿、ここ見てみろ。」
三蔵が指差した先には、所謂『年齢制限』が記載されたマークだった。
「これは15歳以下は閲覧禁止だ。テメェ今いくつだ」
「う…もうすぐ15…」
「もうすぐだと?4月まであと9ヶ月もあるだろーが!返してこい。今現在14じゃ話にならねぇ」
「なんで!三蔵なら余裕で借りれるだろ!三蔵が借りたらいいじゃん!」
「アホか!」
ゴツ!と頭を叩くと、悟空は恨みの篭った目で見上げてきた。
「睨むな。返してこい。コレ借りてやるから」
三蔵が選んだパッケージを見て、悟空はしょうがないか、とため息をついて例のDVDを返すために元の棚へと戻っていった。
その後ろ姿を見つめながら、三蔵も別の意味でのため息をついた。
三蔵が選んだDVDって何だろな…
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