あすなろの記憶サンプル

ある日のことだった。
突然シャナンがオイフェと生活をともにし、勉学に励むと言い出したのは。いつも三人一緒の部屋で生活していたアイラとアーダンは自分たちに気を使っているのだろうかと思った。
「シャナン、私達に気を使ってなら」
「そ、そうじゃないんだ、けど・・・」
シャナンが言うには、早く一人立ちして、アイラ姉さんやアーダンさんのように剣で役に立ちたいと。しかし、剣だけ鍛えているだけではダメで、年上の、軍師でもあるオイフェに勉強を教えてもらいたい。
しどろもどろに話すシャナンを見て、苦楽を共にしたアイラは「もうひとつ何かある」と思った。
「シャナン、他にも何かあるんじゃないか?」
「えっ・・・」
「何か言いづらい事でもあるのか?」
しばらく黙っていたシャナンだったが、アイラの強い視線に負け、二人にとって衝撃的な言葉を放った。
「・・・僕、アイラ姉さんとアーダンさんの赤ちゃんが見たいんだ。それにはふたりが二人っきりじゃないと駄目だって」

ブッ

ゴンッ

直球ストレートなあまりの内容にアーダンは飲んでいた茶を吹き出し、アイラはテーブルに頭を打ち付けた。
一体それを誰に、いや誰にじゃなくてもアイラには分かっていた。

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