響也07 | ナノ





悪夢のような幸せ





※思いが腐るまで/恋は死にましたか/堆積する愛の続編です。
律とかなでが結婚していて、かつ子どもが出てきてもOKな方のみお進みください。





子供のいる家庭の日曜日の朝は早い。
なんだって朝の7時から子供番組をやるんだとたたき起こされた響也は不機嫌に呟いた。
響也をたたき起こした張本人のちびっこギャングは今はテレビにくぎ付けだ。
今みると主人公側の理屈も怪人側の理屈も結構つじつまがあわないヒーローものの番組に響也は深く息を吐く。
今日は日曜日。昨日は明日が休みだということで、うっかり友人達と飲み明かし帰宅したのは深夜0時を優にすぎた、深夜3時だった。その深夜3時から心配して待っていたのだというかなでに説教されること1時間。結局寝たのは3時程度だ。
しかも当のかなでは心労がどうとかで今もベッドの中である。
しかし自分の責任もある以上強くは言えず響也はまたため息をついた。

くっそ、テンション高いな

テレビの前で格闘の真似をしてえいとかやあとか言っている子供達に響也は頭を抱える。
どうせテレビが終わったらこっちに突進してきてプチ格闘ごっこがはじまるのだ。

それこそ、律の仕事だろ

そう、律だ。目の前のガキの父親は律なのだから責任をもって面倒をみてほしいものだと思う。だが当の律は教師の研修とやらで出張中だ。

…その家にいること自体が問題なんだよな

ふと自分の置かれている立場を思い出し、響也はまたため息をついた。
律とかなでが結婚してもう6年になる。失恋の痛手もあって一時は実家を離れていた響也だが、かなでに第1子が生まれたのをきっかけに半ば強制召還された。
律曰く両親が寂しがるから。で、かなで曰く子どもの面倒を見る人手が欲しいのだそうだ。
だったらせめて実家のほうに住まわせてくれと思うのだが、両親は両親で老後は二人水入らずなどと召還した割には矛盾だらけのセリフで何故か律とかなでの家に居候して現在に至る。

俺、なにやってんだろう

巨大ロボットに怪人があっけなく倒されるのをみながら響也は大きく息を吐いた。
律とかなでが結婚してもう6年がたつ。だというのに響也の中のかなでへの思いはなかなか消えてはくれない。最初はきっと律にとられたという悔しさのせいだろうと思っていたが、年月を追うにつれてそれが自分へのごまかしであることに気がついた。

俺はかなでが好きで、愛していて、結局のところかなでじゃないと駄目なんだよな

かなでが結婚してからはなんどか彼女を作ってみたりもしたのだが、そんな思いがあるせいか長続きしない。
だからといってかなでと律の間に割って入る勇気もなく、ずるずるずるずると現在の状態が続いている。

それにしても兄貴も兄貴だよな

響也がかなでのことが好きだと知っているはずの律は結構頻繁に出張という名の外泊をする。
信頼されているのか、それとも危機感がないだけか。あの兄では後者の可能性のほうが高い。
かなではかなでで全くもってこちらの感情には気づかないまま、夜中に怖い夢を見たとかでベッドの中に潜り込んでくる始末だ。

夫婦そろって・・・

ある意味似たもの夫婦なのか、ということはこいつらが結婚したことで俺の気苦労は2倍になったのかと響也が大きくため息をつくと、不意に腹部にどんっと衝撃が走った。突然のことで対応できずに響也は数歩たたらを踏む。何だと思って下を見下ろせばもうすぐ小学校に入るガキがふふんとこちらを見上げていた。
「響也かいじゅう!しょうぶだ!!」
「だーっ」
戦いを挑んでぐいぐいとこちらを押してくる子どもの後ろではハイハイからようやく立ち上がったばかりの子どもが意味もわかってないくせに興奮して囃したてている。
ちらりとテレビに視線を走らせればいつのまにかヒーロー戦隊番組は終了していて、これから悪夢のような格闘ごっこが始まるのかと思うと気が滅入った。
「っち・・・2倍どころか4倍だよ」
気苦労も面倒ごとも、全部ごめんなはずなのに気がつけば自分の周りはそんなものばっかりだ。かなでに律にガキ二人。恋に愛にジレンマに。
何よりも――

それでもそれなりに幸せなんだよな

結局のところそう思ってしまう自分にやれやれと苦笑して響也は日曜日定例の格闘ごっこを開始した。






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