律02 | ナノ



変わるもの、変わらないもの







「律くん、律くんは結婚してくれるよね」
寮のラウンジで唐突にかなでがそうきいてきた。如月律はそんなかなでをたいして驚いた様子もなく見つめると、ついでかなでを追いかけて来たらしい弟の響也に視線をうつす。響也は一瞬ばつのわるそうな顔をして、だがすぐにふて腐れた顔になった。
なんだ、また喧嘩をしたのかとかなでに視線を戻していうと、かなでがぷぅっと頬を膨らませた。
「だって響也ってば私みたいなやつは一生独身だとかいうの」
ひどいの、と訴えるかなでに響也はだからと大袈裟に息を吐く。
「お前はぽえぽえしてるから、そんなんじゃ嫁にいけないっていったんだ」
一生独身まではいってないという響也にかなでは律の背中にかじりついて言ったと喚く。
言った。言ってない。近いことは言った。だけどそこまでは言ってない。
しばらく板挟みになっていた律だが、やれやれと息を吐くと背中で追い詰められた獣みたいにうぅっと唸っているかなでを振り返って真面目な顔で
「心配するな、俺が貰うから」
「律くん!」
きらきらと子犬みたいに目を輝かせる横で響也が苦虫を噛み潰したような顔をしたのが印象的だった。




あれからもう何年たったのだろう

記憶の底に隠れていた懐かしい思い出を想起して律はぼんやりと考えた。
今は結婚式も終わり、ロビーで来てくれた客に挨拶をしているところだ。
彼の相方となる幼なじみは、高校の頃と変わらず幼い容姿で目の前に立っている。
何があの頃と変わっただろうと考えて、一番変わったのは二人の関係だと思った。
幼なじみから恋人、そして夫婦へ。
それを象徴する真っ白なウエディングドレス姿のかなではいつにも増して可愛い。控室でどう、と聞かれたとき素直に可愛いと言うと、ここは綺麗だよとかなでが笑って返した。
律がそうかと笑って返すと、律くんは相変わらず律くんだよねとかなでがまた笑う。
そんなやり取りを思い出して笑みを浮かべると、近くにいた響也がふて腐れ顔で寄ってきた。
「なんだよ、幸せそうにしやがって」
「幸せそう、じゃなくて幸せなんだ」
響也の言葉を真面目に訂正すると、弟はふんと鼻をならした。
そうかよ、よかったなおめでとうと適当に祝辞を述べてその場を去る弟にそういえば弟はかなでが好きだったのだと今更ながらに思い出す。弟の大事な人をとってしまったのかと罪悪で謝罪するといつか見たような苦虫を噛み潰した顔で響也が口を開いた。
「悪いと思うなら譲れ」
「それは断る」
真剣に即答するとやっぱりなと響也が苦笑した。






あとがき
20000Hit御礼アンケート3位その他×かなでで、律かなです。二つ作ったうちの幸せなほう。凄く短い…微妙に律かな←響也の話とリンクしています。超微妙だが。
20000Hit及びアンケート参加ありがとうございました!

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