響也00 | ナノ





思いが腐るまで



※拍手より再録


「響ちゃん、響ちゃんきいてー」
たったったと足音をたてて幼いかなでが駆け寄ってくる。
響也が振り返ると、かなではにこにこと無邪気に笑いながら足を止めた。
「律ちゃんがかなでをお嫁さんにしてくれるんだって」
そういって差し出された指にはシロツメグサの不細工な指輪が絡んでいる。
もうちょっと綺麗に作ってやれよと内心毒づきながら、よかったなと言うとかなではほえほえした笑みを更に濃くして頷いた。
「結婚式には呼ぶから来てね」


そんな他愛もない約束をしてからもう何年たったのだろう。


普段から約束をうっかり忘れるんだから、こんな古い約束はそれこそ記憶の彼方に押しやって誰にも見つからない場所で腐らせて欲しかったと響也は思った。
そう思いながら1番腐ってるのは俺か、と毒づく。
今日はかなでの結婚式。
相手は残念ながら響也じゃなくて、あの時の言葉通り律だ。
今日から響也と兄弟だね、私がお姉ちゃんだねなんて人の気も知らずにかなでがにこにこと声をかけてくる。
その彼女はあの時のシロツメグサの白さを思わせるような真っ白な花嫁衣装に身を包んでいて、その白さが彼女がもう決して自分のものにはならないんだということを思い知らせてくる。

畜生

祝いの席には似合わない、汚い言葉を毒づくと新郎の姿をした律と目があう。厭味なほどタキシードが似合う律は響也を一瞥すると、ゆっくりと口を開いた。
「悪いな」
ささやくように吐き出された言葉は響也にだけ届く。響也は小さく息を吐くと律にだけ聞こえる声で小さく呟いた。
「悪いと思うなら譲れ、クソ兄貴」
「それとこれとは別だ」
半ば負け惜しみで言った言葉はあっさりと返された。響也は再び息を吐くと、他の友人達に花嫁衣装を見せに行ったかなでの背中を目で追う。もう手の届かない場所までいってしまったかなで。でも、まだこの思いが腐るまでは思い続けてもいいだろうか。
言葉にしたわけではないが、何かを察したらしく律は苦笑して響也の背中を叩いた。




あとがき
何かを書き足そうとして挫折。響也、好きなんだけどな…こんな扱いでごめんよ!
後12股プレイの時一回うっかり忘れてごめんよ!
でも好きです(本気)。

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