「明日地球がほろぶとしたら、今日なにしたい?」


あまりに突飛な質問だったから、ぼくの口からは「はぁ?」という間抜けな音しか出なかった。
やっと質問を理解したぼくは、今まで目を落としていた本を閉じて机に置く。

「なにをいきなり…」
「いいから、答えてよ。」

有無を言わさない口ぶりに、しぶしぶと考え込む。

ようするに、彼女が言ったのは、良くある「意味のない質問」というやつだ。
透明人間になったら、とか、一億円拾ったら、とか、魔法が使えたなら、とかもこの部類に入るだろう。
しかしながら、質問に意味が無いからこそ、答えに困るのも事実だった。
真面目に答えるべきか、適当にあしらうべきか、少し迷った。
適当にあしらうなら、「そのときにならないと分からない」でも、「美味しいものを沢山たべたい」でも、「人を殺してみたい」だってなんら問題はないはずだ。
しかし、残念ながら、ぼくは彼女に対していい加減な事をしたくないという気持ちを持っていた。
彼女がどういう答えを求めているのか、てんで分からなかったから、ぼくは真面目に考えてみることにした。




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