「えっと・・・扉は・・・」
蔵の前には大きな南京錠がかけられていた。
「やっぱり・・・鍵、探さないとダメか・・・」
しょんぼりと肩を落とす水城を見て、何を思ったか、双獅は南京錠へと手をかける。
「双獅、何を・・・」
するの?
そう聞いた水城の声は大きな打撃音によって遮られた。
「これでも壊れませんか。何かおかしいですね。この蔵」
双獅は何事もなかったかのように南京錠を調べている。
「そ、双獅!?素手で南京錠なんか殴って大丈夫なの!?」
水城は双獅に駆け寄り、南京錠を殴った双獅の右手を持ち上げる。
素手であれだけ派手に殴ったのだから、血が滲んでいるものだと思っていた。
「え・・・?傷が、ない」
だが、そこには血はおろか、擦り傷一つなかった。
「水城様、私達は人間ではありません。物を殴れば多少の痛みはありますが、それも一瞬のこと。小さな傷など、心配要りませんよ」
水城を不安にさせないように、優しい笑顔でそう言った。
「そっか。怪我してないならよかった。でも、怪我しないからって、急にこんなことするのは止めて。本当に大丈夫かなって心配になるから」
ギュッと双獅の右手を両手で握る。
双獅の手を握る水城が今にも泣き出しそうな顔をしていたのだろう。
双獅は少し困ったような笑みを浮かべ、水城の手を両手で優しく包み込んだ。
「水城様・・・そんなに心配してくださってありがとうございます。それが水城様の命令であるのならば従いましょう」
「違うよ。これは命令じゃなくて、約束。私と双獅の約束」
「・・・はい。その約束、しっかりと守らせていただきます」
水城と双獅がお互いに笑い合い、二人の間に和やかな空気が流れた。
「ゴホンッ」
そんな空気を打ち払うかの様に、鹿衣がわざとらしく咳払いする。
「二人だけで空間、作らないでよねっ!」
鹿衣が水城の手から双獅の手をどけ、水城を守るような形で二人の間に割り込む。
「二人とも、僕達のこと、完全にわすれてたでしょ」
むくれてそう言う鹿衣はまだまだ甘えたりない子供に見えてくる。
身長がほとんど自分と変わらない鹿衣の頭を水城は無意識に優しく撫でていた。
「姫様・・・僕のこと、子供扱いしてる?」
「あ、ごめん、つい・・・嫌だったよね」
水城は急いで鹿衣の頭から手を離した。
「別に、嫌じゃなくて、どっちかというと安心するっていうか、あ、でも子供扱いされるのは嫌で・・・」
・・・難しい年頃のようだ。
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