18 手紙


水城達が家に着くと、里狐の言っていた通り、家に両親の姿はなかった。

テーブルの上に小さな紙切れが置いてあるのに気付いた水城は、その紙切れを手に取った。


『水城へ

突然だけど、お母さん達は旅行に行ってきます。

お母さん達が帰ってくるまで、神社の経営は水城に任せます。

もう高校生だから、一人で生活できるわよね?

それじゃ、水城の生命力を信じて、行ってきます

母より


P.S.
ちゃんと学校も行くのよ!

・・・って言っても、もうすぐ冬休みか。

一人でお正月過ごすのは寂しいかもしれないけど、お母さん達が帰ってくるまで生きるのよ(笑)』



読み終えた水城は一言。

「お母さん、別に私が旅に出るわけじゃないんだしさ・・・」

大げさすぎ、と苦笑する。

紙を折りたたんだ時、裏にも文字が見えた。

「あれ?こんなととこにも・・・」

裏を向けてみると、父親の字が並んでいた。



『水城へ

父さん達がいない間、蔵の中にある、小さな札を境内の隅に貼っておきなさい。

蔵の扉の開け方は自分でどうにかしてくれ。

じゃ、行ってきます』



「蔵の中にあるお札?そんなのあったかな・・・しかも、蔵の開け方は自分でどうにかしてくれって・・・」

水城の持っている紙を横から覗いていた拓蛇が、蔵に行ってみましょうか、と皆を促した。



蔵へ行こうと玄関を出ると、ちょうど家へ入ろうとしていた双獅と鷹明に鉢合わせした。

「あ、双獅、鷹明君・・・って、鷹明君、大丈夫!?」

「あ、あぁ、大丈夫だ」

そう言う鷹明の体には擦り傷やら、青あざやらがいっぱいできていた。

「・・・本当に大丈夫?」

「大丈夫だって!ははは・・・はぁ〜・・・」

大丈夫だという割には、笑い声がため息に変わっている。

どうやら、双獅に心身ともに痛めつけられたようだ。

一方、双獅はと言うと。

「水城様、遅くなってしまって申し訳ありません。水城様がお帰りになられる時、私もご一緒しなければと思ったのですが、どうしても、どうしてもこの鳥が自分を踏みつけて欲しいと言ったもので・・・」

「オイコラ。俺、そんなこと一言も言ってねぇぞ。ってかお前さ、絶対俺いじめて楽しんでんだろ。絶対俺で遊んでるだろ!?」

「もちろんです。楽しまなくてどうするんです?」

ニコニコと笑う双獅。

何かと、無茶苦茶な理由を付けて、鷹明をいじめている。

楽しまなければ損、ということだろうか。

いつもならここで双獅に言葉を返す鷹明だが、今はそんな元気など全くないらしく・・・
「もうヤだー・・・この人・・・」

半泣きになって拓蛇と鹿衣と水城に慰められていた。






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