ゲームオタクだとか言わないで
「よぉーっス秋山ぁー、中川君が遊びに来ましたよー」
インターホンも鳴らさずに堂々と玄関のドアを開け、秋山家へと上がり込もうとした俺の視界に、まるで仁王像のように両脇で佇んでいるデカイやつらが入り込んだ。
まぁ仁王像のようにと言っても、ヤツらは俺がこの家へと入るのを防ごうとしてるわけでもなく、それはもう満面の笑みで俺を見ているわけであって。
「「スズちゃーんっ!」」
「ぎゃあっ!!」
二人同時に飛び付かれた俺が(しかも不本意ながら俺よりデカイ)ヤツらを支え切れるわけがなくて。
ガンっとそれはもう良い音が玄関に響いた。
「……で? 俺に何か言うことはないかね馬鹿双子よ」
「「好きですっ!」」
「…っだぁれが告白しろっつたぁぁあ! 謝罪だろっまず謝れよ俺にーっ!!」
打ち合わせでもしてたかのように同じタイミングで同じ馬鹿なことを言いだす双子に、全力でツッコミを入れる。
というか俺基本ツッコミキャラじゃないンだけど。
あぁ、頭が痛い。色んな意味で痛い。クラクラしてくるよ真面目に。
抱きつかれた後双子を支え切れなかった俺は、まぁベタながら玄関のドアに後頭部を強打した。
尋常じゃない痛さに思わずぶつけた後頭部に手を伸ばすのを躊躇うくらいに…痛い。
それに耐えるように顔をしかめていると、俺の前で正座をさせていた双子がオロオロとし始めて。
「す、スズちゃん頭大丈夫?」
「どうしようシゲっ、スズちゃんの頭がこれ以上悪くなったら!」
「病院に連れてった方がいいのかなっ?」
「そしたらどこの科がいいのかなっ? 外科? 内科? 精神科っ?」
「あはは、喧嘩売ってるなら買うぞ?」
自分なりにイイ笑顔でぐっと握りこぶしを作って見せると、双子はこれまた同じタイミングで床へと額を擦り付けんばかりに土下座をしてきた。
なんだこの光景。
「うっわ、なんだお前ら」
「あれ、秋山だ。そういえばどこ行ってたンだ?」
「あ? あぁ、夕飯の買い出し。どうせ食べてくだろ?」
そう言って片手にぶら下げてたスーパーの袋を持ち上げて見せる。
パッと見色々入ってて一体何を作るかわからなくて聞いてみれば、一言「お好み焼き」と返ってきた。
秋山は俺の横を通り台所へ向かうと、冷蔵庫に買って来たものを入れ始める。
そしてふと思い出したかのように、こちらへと顔を向けた。
「つかコイツら何してんだよ」
「え、アッキー見てわからないの? ぷふーっ」
「え、あっちゃん土下座もわからないの? ぷふーっ」
「何で土下座しながら上から目線なんだよ、馬鹿か。頭踏みつけるぞ」
「「すみませんでした」」
…時々秋山は俺よりドSなんじゃないかと思う。
まぁ俺にさえソレを向けなければどうってことないンだけどね。
「あれ、アッキーって64なんて持ってたんだー?」
「うっわー懐かしぃー!」
いい加減うっとおしくなってきた双子(デカイ男二人が土下座してる様とか正直異様過ぎる)を解放してやると、テレビの横に無造作に置かれてるゲーム機の類の中から64を発掘してきた。
何気に秋山家はゲームの種類が豊富だ。スーファミが出てきた時は思わず感動したね、俺は。
「しかもコントローラーが都合のいいことに4つ!」
「これはやれってことだよねっあっちゃん!」
キラキラとした目が4つ、俺と秋山を見つめる。なんだこの大型犬共は。
思わず俺と秋山は顔を見合せて、同時にふき出した。
「じゃーまずは基本のマリカーね!」
「さすがヒロ!わかってるー!」
「基本なんだ」
「なんでもいいからセットするの手伝え」
「んー…、ヒロがマリオでシゲがキノピオかー…、俺どうっすかなー」
「勿論スズちゃんはピーチでしょ!」
「ですよねー!」
「や、俺実は持ちキャラはクッパって決めてるンだ」
「「裏切られたぁぁーっ!」」
「ていうかだったら悩むなよ」
「うるせぇーよ。…そんな秋山君は何選ぶンですかぁー?」
「あー? そりゃ勿論ヨッシーだろ」
「……」
「なんでお前ら黙るンだよ」
「うっわうっわ! ちょ、クッパがワンワンに食われた!」
「ちゃんと見て走ってんのかよ、中川」
「そう言いつつ、何気にさっきワンワンに食われてたアッキーでしたー」
「その隣を颯爽と通り過ぎてった俺達でしたー」
「ていうか秋山何気にビリじゃん」
「……」
「やったー俺ら1・2フィニッシュー!」
「てことでご褒美ちょうだいスズちゃーんっ」
「何で中川なんだよ」
「しょうがねぇなー、何が良いンだ?」
「お前もなんで普通に受け入れるんだよ」
「「プリーズキスミー!」」
「おー、別にイイぜー?」
「っ却下に決まってるだろ! だからなんで受け入れてんだよお前!」
「秋山も俺にちゅーしてもらいたかったら、次で頑張れよー」
「よし、もう一回やるぞお前ら」
「「チョロイ男だね秋山」」
ゲームばっかりやってないで外で遊びなさいなんて俺達は聞き入れないぜ?「ていうか腹減ったわ、俺。なぁーお好み焼きまだ?」
「おい中川、今何時か分かって言ってるのか?」
「3時過ぎたとこだねーアッキー」
「時計も読めないのー?あっちゃん。ついでに言うと俺らも腹減った」
「お好み焼きはオヤツじゃありません」
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