SS
◇送信シマシタ!

どうして好きなんだろう。
広い背中を見て思う。

バレたら傍にいられない。
この気持ちが間違いだったらいいのにって、好きなアイツの悪いところを探した。探して、また見つめてを繰り返してた。

「あの…、俺の服になんか付いてますか?」
「えっ」

長太郎が戸惑うように尋ねてきた。
まずい。見てたの、バレた。
血の気が引いた顔をさりげなく逸らす。

「お…おまえなんか見てねぇし。窓の外、見てただけだっつの」
「外…なぁんだ」
「なにが『なぁんだ』だよ」

わざと呆れたふうに言うと、長太郎は「変な意味じゃなくてですね、」と前置きして話し出した。
変な、意味。
また冷や汗が出た。

「最近、宍戸さんの方見てなくても視線を感じられるようになった気がしまして」
「……」

照れ笑いする長太郎とは逆に、俺は氷河期のごとく凍り付いた。

「このままいけば、テレパシーできるようになって、青学みたいにシンクロもできるようになるかもしれませんね〜。えへへ」
「はぁっ?」
「いや、あの、シンクロできる方が強いとは言ってないっすよ!確かに、シンクロしてる時の、ダブルスパートナー同士だけの世界って気になるんですけど…」

長太郎は笑う。癖で眉毛がちょっと下がる、俺がなぜかぐっとくる笑い方だ。

「俺は宍戸さんとじっくり作戦会議して臨む試合が好きですから。声掛けしたりアイコンタクトしたりして、たくさん努力した末に息ピッタリに動けるっていうのが最高に気持ちいいです」

言いながら長太郎はゆっくり近づいて来て、とうとう俺の顔を覗き込むようにしてきた。
そんな至近距離で好きな奴の目を見つめられるはずもなく、下を向くと……は、はだけたワイシャツが。
その隙間から、鍛え上げられた胸板がちらちら見え隠れする。近いから、汗の匂いもする。
あああ。
ますます頭の中が混乱してく。

「あ、ちょ…なんか近いって」
「やです。捕まえました」
「え?」
「好きです」
「は!?」
「俺が振り返っても目を逸らさないで下さいよ。可愛くてキスしたくなっちゃいます…てか、もう限界…」

ちゅ。

キスされて、すべて見透かされていたとわかった俺は、顔から火が出そうになった。

そしてもう一言。

「鎖骨かな?胸筋?見てるだけじゃなくて、触ってもいいですよ」

撃沈。

長太郎は一足先に俺のテレパシーを受信できるようになってたんだな……ちくしょう。


2011/04/07