▼2 理由はそんなとこ。 寮の案内とか色々任せたいから、放課後に職員室まで転入生を迎えに来てくれと。 なんとまぁ萌えのない展開だろうか。私が行ったって面白さの欠片もないではないか。 ここはやっぱ生徒会副会長が行くべき所でしょうが! 副会長はカッコいいというか綺麗系で、普段から穏やかで笑顔を振りまいてる人なんだけど実は腹黒。 これまで一部の親しい人しか知られてなかったその事実を、転校生は人目で看破してしまうわけですよ! 「そんないっつも作り笑顔で疲れない?」 とか聞いちゃうわけですよ! 出会って数分後にフラグ立てちゃうんです。 その一件で副会長は転校生に興味を持って早い段階から恋愛感情を抱くという、無くてはならないイベント。 実際ここの副会長が穏やかで笑顔振りまいてるかと言われれば多分違うと思うけど。 何も無いのに常にニコニコ笑ってたらそれは不審者だ。 若しくは私と同じ妄想族に違いない。 現実は世知辛いという事か。思う通りなようで、なかなかどうして。 とか何とか。妄想に耽ってる間に職員室に着いた。 本当、妄想って便利ですよねー。時間を忘れるって言うか私瞬間移動した気分です。 たまに時間跳躍したって本気で感動する時あるよ。 嫌いな授業中とかあれこれ頭の中でお祭り騒ぎしてる間にチャイム鳴るもの。 トリップっていか現実逃避なんだけどね。 「失礼します」 戸を引いて中に入る。 担任の席に直行すれば、もう諸々手続きは終了したのか談笑している様子だった。 先生は椅子に座り、転校生らしき男の子は私に背を向けている。 顔は分らない、けど……なんだか。 「おー堂島来たか」 片手を上げた先生に頭を下げる。 すると男の子がゆっくりと私の方を振り向いた。 多分、染めたんじゃなくて、生まれつき色素が薄いんだと思われる茶髪はトップは短いけど襟足は肩につくくらいとちょっと長め。 アーモンド型のくっきりした二重の瞳、すっと通った鼻筋に、薄い唇。 小説はいっぱい読んでるけど、こういう描写が自分で出来るわけじゃないんだな……。 特徴を並べてみたけど、これじゃ伝わらない。 彼はとても綺麗な人、とだけ言わせて貰います。 けれどもなんだかガッカリ感が襲ってくるのは何故でせう。 美形だ、イケメンだ。そりゃもう腐ってても乙女な私が目が合ってドキがむねむねするくらいに。ごめんなさい動揺が隠し切れなかった。 でも違うんだ! 私が求めてたのは小柄でぇ、女の子も嫉妬しちゃうくらいの可愛いー!! って叫びたくなるような、ね!? もっとこう受け受けしいと言いますか! 中性的と言われれば確かにそう。真っ白い透き通った肌なんて惚れ惚れする。 だけどやっぱり彼は男前だ。ひょろっと細身だけど、骨格とかは意外としっかりしてそうだし。 背だって、私の身長から考えて目算するに175cm前後と言ったところだろうか。決して小柄じゃない。 あえて蛇足するなら、私は166cm。女の子にしちゃ高い方、男にしたら低い方。だけどこの位の身長の男って案外ざらにいるものだ。だから特に小さすぎて目立つなんて事はない。 うん、本当いらない情報だった。 話を戻す意味でもう一度言います。ガッカリです。 「堂島ー? どした、方波見に見惚れたかぁ」 「カタバミ?」 「こいつが方波見 稔(かたばみ みのる)で、こっちが堂島 香苗。ルームメイト同士仲良くやってくれよ」 これは暗に女だってバレんなよって私に言ってるんだろうな。 そこはなるようにしかならないと思うわぁ。 曖昧にぼかす意味を込めて笑う。 ふと目の前にいる方波見くんに目をやると、何故だかガン見されていた。 コイツと相部屋かよー的な? 何か問題でも? 首を傾げれば慌てた様子で「ごめん」と謝られた。一体何に対して。失礼な事でも考えてたのかおい。 ああでもそうか。美形受けという道もまだ残されてたね。 今までは女の子にカッコいいとかって持て囃されてて「俺は巨乳のお姉さんが大好きなんだ!」なんて言ってるノン気(ホモでない人の意)だったんだけど……展開。 さっきも言ったけど、綺麗で中性的だからなぁ。受けって言っても違和感ないなこれ。 お、そう思うと俄然やる気出てきた。 「よろしく、方波見くん」 「え、あ、うん。よろしく」 へへへ、と邪念たっぷりの私の笑いに何かを感じたのかぼうっとしてたのか。 ちょいと間抜けな返事だった。 いやいや、マジでこれから宜しくお願いしますよ。総受けとして! 前 | 次 戻 |