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「まあそういうわけで、双方の利害が完全に一致した次第よ」
「なにこの本人の置いてけぼり感!」

 私と稔ぽつんとしちゃってんですけど!
 私達の大切な青春3年間がとんでもねぇ利害関係によって捻じ曲げられてんですが!
 
「あらじゃあ香苗はあの学校に入学して後悔してんの?」
「……それは、ないけど」
「ならいいじゃない。結果オーライ。終わりよければすべてよし」
「終わって無い! まだ私の高校生活全然終わってないよ! これからも続くよ!」

 ぱちん、と手を叩いて何勝手にシメに入ろうとしてんだ!
 
「ずっと内緒にされてたのが淋しいんだよね、香苗ちゃんは」

 穏やかに目を細めて浪形さんが語りかけてくる。
 
 あ、やばい。みかんの汁の効果が再発。涙出てきそうだ。
 
 今までも浪形さんのファンだったけど、今日から私ファンクラブ入ります! どこまでもついて行きます!
 もう稔の代わりに一緒に帰省してもいいよ、むしろ私を実家に連れてって!

 あの言葉に声に顔に。完璧だ。完璧な男だ。惚れるなという方が無茶な話だ。
 
 ぼーっと浪形さんを見つめてたら、稔に視線をシャットアウトされた。
 手で目隠しされた。
 
 はっ、友達のお父さんにもうちょっとで恋するところだった。危ない。
 
「先生達に相談して正解だったな。香苗ちゃんには普通の高校生活を奪ってしまって本当に申し訳ないけど、稔と友達になってもらえて良かった」

 出会いが特殊過ぎたから、私と友達になった事で稔の女性不信が改善されたかどうか甚だ疑問だけれど。
 浪形さんに感謝されるなんて、すごく善い事した気分だわ。うへへへ
 もっと褒めてぇ! おかわりぷりーず

「稔もそう思うだろ? 香苗ちゃんが一緒で良かったって」
「はぁ!?」

 にこにこの波形さんに、たじたじの稔。父親強し。
 
 顔を真っ赤にして口をぱくぱくさせてる稔を眺めて満足そうに頷くお父様が格好良過ぎて香苗も赤面しそうです。
 
 どうしてくれような、この女の子の心を鷲掴みにして離さない親子。
 ある意味女性の敵だわ。
 
 私のハートを奪った憎い人! みたいな。
 
 しかしここは浪形さんではなく、稔を弄るターンだよね間違いなく。
 
「そっかぁ……稔は私が友達ってだけじゃ不満なんだね……」
「誰もそうは言ってないだろ」
「私じゃ稔を満足させてあげられない。……ええいそこまで言うなら赤字覚悟! どどーんと板宿先輩もセットで付けちゃいます!」
「通販みたいなノリで余計なオプションつけんないらねぇ!!」
「え? まだ足りない? もう、これが最後ですよ? なんと唯先輩」
「俺を殺す気かぁっ!」

 ツッコミ稔復活。
 3年先輩ズは最強だよね。2人とも怖いベクトルは真逆だけど、それぞれ最恐だよね。
 
 私の親やら更に思いもよらない自分の父親の出現ですっかりペースを崩してた稔だけど、ここでやっと持ち直したようだ。
 
 よしよし。
 ちなみに私の両親と姉は相変わらずテレビに釘付け。
 
 そんなに面白いかそれ?
 
「こんな息子だけど、これからも宜しくね香苗ちゃん」

 私と稔の掛け合いを見て笑いながら浪形さんがそう締めくくった。
 
 コタツから出てまた丁寧に両親にお礼を言って「そろそろお暇を」と立ち上がった。
 こんなにコタツが似合わない人なのに、とても日本人らしい礼儀を重んじるんだから、なんだかちぐはぐだ。
 
 稔が礼儀正しいのは躾けの賜物だな。

「稔、ちょっといいか?」

 玄関までみんなでお見送りしたんだけど、稔だけ呼ばれて少し話をしていた。
 私達の前ではしにくい親子の積もる話でもあるんだろう。
 



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