日常なんていうのは非日常の連続だ。
 
 などと意味の解らない事を言ってみたりする今日この頃。
 
 私は今、遭難しています。
 
 ああ、ちょ、待って、違うの。思考がとか、比喩的表現とかじゃなくて、ただいま絶賛山で遭難中なんです!!
 
 香苗は山ガールになれませんでした。不甲斐ない私をどうかお許しください。
 
 そんな遺書をこの土に書いておこう。
 
 て、死にたくない!!
 早まるな私、落ち着け私。
 遭難って言ったってハイキングコースから落っこちちゃっただけだし、そこから動いてないんだからすぐ誰かが助けに来てくれるはず。
 
 別に足くじいたわけでも、熊が出るわけでもなし!
 ……出ないよね? ベア
 
 考えるな私、フラグを立てるんじゃない私。
 
 よしちょっと頭を整理しよう。どうしてこうなったのか、朝から順を追って回想してみよう。
 そうこうしてる間に時間が経って無事救出されるに違いない。
 
 よし。
 
 事の発端はそう……とか、物語のモノローグっぽく言ってみる。
 
 
 テストが終わって3週間。11月に入り秋から冬へと季節が移り変わろうとしている時。
 
 1年生は1泊2日で林間学校に来ていた。
 バスに揺られて2時間程度で到着したのは緑豊かな山。
 コテージがいくつも並んでいる近くには川が流れていた。
 
 なんというパワースポット。マイナスイオン浴びまくり。
 
 さわさわと風に靡く木々が奏でる音が何とも、寒々しい。黄茶に変色した葉がぽろりぽろりと落ちて地面で揺れる。
 
 どうして秋ってやつは、人をこうも物悲しい気分にさせるのかしら。罪作りだわ。
 
 山の上だから絶対寒いと思って着込んできて正解だった。ヒートテック万歳。
 
「じゃあ班ごとに分れてコテージに荷物いれてこーい」

 先生がそういうと、みんなぞろぞろとコテージの方へとばらけて行った。
 コテージ番号は予め言い渡されていたので、そこへ入るだけだ。
 
 コテージってかログハウス? 言い方はよく分からないけど、まあ横文字で濁しちゃいるがただの小屋だ。
 扉を開けたら6帖くらいの板の間があって、それだけ。端っこに靴を置く棚と、布団が4人分。
 本当にただ寝る為だけの小屋だ。
 
 ちなみに私の班のメンバーはなんとも変わり映えのしない稔、基、時芽。
 安心安全安泰をお届け。
 
 最初は担任に呼び出され、こっそりと先生達の所で寝るかと提案されたんだけど丁重にお断りした。
 どんな林間学校だ、苦行の間違いだろう。
 
 というか先生も本当はそんな事したくないだろうに。
 だって大抵こういう泊まりの行事って、先生達夜は飲めや歌えのドンチャン騒ぎでしょ?
 生徒の目を盗んでお酒を浴びるように飲むんでしょ?
 
 私がいたら出来ないじゃん。そんなの申し訳なさすぎるし肩身狭いし居心地最悪だ。
 
 それなら気心知れた稔達と枕投げもしくはウノを夜通しやってたい。
 
 先生は「お前を男共と寝かせるわけには!」とかちょっぴりカッコいい事を言ってたけど、いやいや毎日稔と同室でぐーすか寝てるからっていう。
 
 先生達は裏から、表からは稔に協力してもらえば1泊くらいどうって事はない。
 なんだか、そんな気がするー、ってわけで小屋で寝ます。
 



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