すくーる・わーるど










ふわふわと部屋の中を漂いながらゲンガーは怪しく笑う。

ゲンガーの目が光り、ぼんやりと暗い影が迫って来る。ナイトヘッドだ。



「守るで防いで!シャドーボール!」



エーフィはシャドーボールを放つがゲンガーは自分の特徴をうまく生かし、影から影へと移動して交わしている。

室内じゃあちょっと分が悪いか。なら―。



「いくよ!シャドーボール!!」



ゲンガーの左側へ一発。避けようと右へ体をそらしたところへ一発。そして焦ったところに正面へ一発。エーフィの連続攻撃でゲンガーに隙ができた。



「よし!サイコキネシス!」

「ゲン、ガー!!」

「エフィ!?」



サイコキネシスで捕まえて縛り上げたが、ゲンガーも抵抗してナイトヘッドを放った。それに驚いたエーフィがサイコキネシスを解いてしまう。

ゲンガーは両手を前に突き出し、じーっとこちらを見つめる。エーフィではなく、私を。

?………私???





っやばい!!





すんでのところで催眠術をかわす。私の後ろではじけた光を見て、ゲンガーはケッと悔しそうに鳴いた。

…ほう、私を狙って技をかけたと。










「文次郎!!???」



だが、どうやら後ろにいたらしい文次郎君が催眠術にかかったらしい。

ゲンガーはあくどくにやりと笑った。



ゲンガーはまた両手を前に突き出す。そして、文次郎君から淡い光を吸い上げた。



「なるほど。催眠術と夢喰いのコンボで体力を回復しているわけか」

「エフィ、フィー」

「うわあっ!!?団蔵たちからも潮江先輩と同じ光が抜けていくっ!!???」

「この子たちが目を覚まさないのも、催眠術で眠らされて、夢喰いで体力を吸われてるからってことね」

「ケケケ!」



そうと分かれば、



「ペロリーム!アロマセラピーでみんなを起こして」

「ぺろーん」



アロマセラピーはすべての状態異常を回復できる。

心地よい香りが部屋に充満すると、眠っていた忍たまが次々目を覚ました。



「ん…、」

「あれ、ここは…」

「僕たち、いったい何を…」

「なんか、久しぶりにすっごく良く寝た気がする〜」

「ゲッ!?」



アロマセラピーにより、目を覚ました忍たまたちを見て、ゲンガーが顔色を悪くする。わかりにくいけど。

もうこれで、いつでも体力回復とはいくまい。



また、影に入り込んで逃げようとしたゲンガーをエーフィがサイコキネシスで捕まえる。





「お仕置きだよ、ゲンガー」



















(espeon side)

ナナミはゲンガーを医務室と書かれた木のプレートがかかった部屋の前の廊下に座らせて滔々と説教をしている。悪いことをしたらその場で叱るというのがナナミの教育スタイルだ。

人間に技をかけたから、ではなく、人に技をかけて苦しんだり困ったりする様を楽しんだりしたのが怒りのポイントらしい。ナナミは愉快犯的な行動が嫌いなのだ。

軽いいたずらくらいなら多めに見てくれるが、あまりに悪質なのは…。
なぜいけないのか、その行動がどんな事態を引き起こすか、正論で静かに説き伏せるのだ。
口と目以外のパーツを動かさず、無表情でゲンガーを見下ろしているナナミは威圧感が半端ではない。わたしはそんなナナミを見上げて彼女の足元で丸くなった。今日は長くなりそうだ。

本気で怒るとこんなものではないのだが、部屋の中に避難していた緑色の服を着た人間二人がドアを開けて顔を開けた。茶色の髪の男の子の方が少し気の毒そうな表情で声をかけた。

「あ、あの…、ナナミさん、もう、それくらいで…」





「くノ一にも引けを取らない迫力と恐ろしさだな…」

「文次郎君、何か言ったかな?」

ビクッ「…いやなにも」









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