すくーる・わーるど












部屋に入るとエーフィがある一点をじっと見つめて体制を低くした。そこには、寝込んでいる4人の枕元で心配そうに看病している乱太郎君がいる。

部屋のすみで何やら包帯を巻いていた少年が顔をあげた。たぶん笑顔を向けたのだろうが、顔色が青白いので、明るさはあまり感じられない。



「おかえりなさい、伊作先輩。何かわかりましたか?」

「ただいま、伏木蔵。乱太郎、変わったことはなかったかい?」

「特に何も。団蔵も左吉も神崎先輩も田村先輩も変わらずうなされたまま目を覚ましません。どうなっちゃうんでしょう…」

「うん。それを今から調べてもらうからね」



そう言って伊作君は後ろにいた私に目をやった。原因は一目瞭然である。

エーフィのビロードのような滑らかな毛並みがゆらりと波打つ。エーフィの体毛は敏感で、空気の流れを感じ取り、これからの天気を当てたり、相手の行動を予測したりすることが出来るのだ。



「乱太郎君、ちょっと聞くけど、今、体がだるいとか寒いとか、ない?」

「えっ、あ、そういえばそうかもしれません。私もずっと、団蔵たちについていたので」

「疲れがたまっているのかもしれないね。心配なのはわかるけど、乱太郎まで倒れてしまっては元の子もないよ」

「いや、たぶんそれは看病疲れじゃないと思うよ。エーフィ」

「フィー」

「サイコキネシス」

「えっ、わっ、わわっ!?」

「なっ、」

「わ〜、すっごい!すりるとさすぺんす〜!!」

「貴様!何をっ!?」



ふわり、と乱太郎君の体が宙に浮く。足が地面から離れると、その陰から濃い紫色の人型が浮かび上がった。

真っ赤な瞳が怪しく笑う。


「エーフィ!捕まえて!サイコキネシス!」

「エフィ!」

「わっ!?」

「乱太郎!!大丈夫かいっ!!?」

「は、はい…。あれは、いったい…」



サイコキネシスが解かれた乱太郎君はどすんと、床に落ちてくる。サイコキネシスのターゲットを切り替えたエーフィの方へ泥がすごい勢いで飛んでくる。



「かわして!」



エーフィが立っていた場所に泥の水たまりができる。なんとも言えない異臭がする。ヘドロ爆弾か。

あと始末が大変かもしれない。







「ちょっと悪戯がすぎるよ、ゲンガー」









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