すくーる・わーるど












「おい貴様!うちの後輩に何をしたっ!!!」

「ノックもなしにいきなりレディの部屋に入ってきて、第一声がそれなんて、あまりに失礼じゃないかな」



あてがわれた部屋の中でおとなしくエーフィのブラッシングをしていると、スパンと勢いよく戸が開いて松葉色の忍び装束をきた少年が現れた。

よく見ると、私が最初忍術学園に来た時にいきなり刃物を突き付けた人だ。第一印象最悪の人。



「そもそも私は君の後輩君とやらに会ったことないんだけど?」

「とぼけるな!貴様でなければこんな不可思議なこと、誰ができるというんだっ!!」



うん、まったくもって意味が分からない。いきり立つ少年に警戒態勢のエーフィ。どうしようかな、これ…。

困惑していると、廊下からドタッという音が聞こえた。誰かこけたかな。

少しすると、少年が開け放した戸の陰から同じく松葉色の装束をきた少年が現れた。怒りに震える少年とは対照的な優しそうな印象を受ける猫目のイケメン君である。



「少し、落ち着いて文次郎」

「伊作!これが落ち着いていられるかっ!!」

「えーっと、君は?」



見上げて尋ねると、伊作と呼ばれた少年は申し訳なさそうに形の良い眉を下げて、姿勢よく正座した。



「初めまして。僕は6年は組の善法寺伊作です。保健委員会の委員長をしています。ほら、文次郎も」



伊作君が文次郎と呼んだ少年に目を向けて、自己紹介するように促すが、彼は腕を組んでかたくなだった。



「ふん。間者かもしれないやつに名乗る名前などない」

「あー、もういいから。それで、伊作君?君たちは私に一体何の用なの?」

「移動しながら話します。医務室へ来ていただけますか」



丁寧な口調でそう言った伊作君の目は全く笑っていなかった。



部屋を出て、私たち医務室という場所へ向かう。エーフィは私の隣を歩いている。前には伊作君、後ろには文次郎君。なんだか連行されているみたいで落ち着かない。



「今、医務室では4人の忍たまが突然眠ったまま目を覚まさない状態です。その忍たまというのが文次郎が委員長を務める会計委員会の後輩たちなんです」

「この3日間、叩いても水をぶっかけても起きない。たとえ3日間完徹して眠気が限界を超えていようとも俺の怒号1つあればすぐに目を覚ますというのに。この事態は異常だ」

「そうなの?むしろ、3日3晩徹夜しても撃沈しない君のほうが異常なんじゃないの。そして、君より幼いであろう後輩君たちにその状況を強いてるほうが異常だと思うんだけど」

「僕も、成長期の体に睡眠不足は良くないって再三言ってるんですが、それはこの際いいです。確かに、会計委員会のみんなの様子は僕からみても少しおかしいです。ずっとうなされているのに、何をしてもまったく目を覚まさない」



二人の話を聞いているうちに医務室に到着した。扉を開けると少年4人が額に脂汗を浮かべて苦しそうな表情で横になっていた。

その様子を見て、伊作君がつぶやく。





「まるで、悪夢の中に閉じ込められたようです」










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