すくーる・わーるど










(hachizaemonn side)

夜間の見回りをしていると、闇夜の中で何か音がした。



「どうした?八左ヱ門」

「今、なんか音がしなかったか?鳴き声、みたいな」



夜間の見回り当番は忍たまの場合、2人1組で行っている。今夜の俺の相方は同じ5年ろ組の鉢屋三郎である。

その三郎が意地悪く口の端を釣り上げた。



「また、何か逃げ出したか?」

「やめろ!洒落にならねえから!」



俺が委員長代理を務める生物委員会はウサギや鶏、馬、毒虫などを飼育している。だが、その動物たちがよく脱走するのだ。ウサギや鶏くらいならまだいいが、これが馬や毒虫だったら、周りへの被害も大きくなるのだ。



「俺、ちょっと見てくる!」



三郎にそう言って俺は音のした方へ駆けだした。走っていくと、暗闇の中でぼんやりと霞のような光が浮かんでいた。まさか、霊とか妖怪変化の類だろうか。

速度を落とし、恐る恐る近づくとそこは普段はあまり使われていない倉庫だった。入口の前に何か置かれている。目を凝らすと、よくよく見知った忍たまの1年生だった。



「虎若!?」



夜半だということも忘れて思いっきり叫んでしまった。駆け出そうとした足が不自然な体制で止まる。

なんだこれ!?動けねえ!!?



「ぶら、」



俺の知っている獣のどれとも違う鳴き声に顔を上げると黄色の光のなかに浮かぶ緋色の光と目が合った。

全身が黒い四足歩行の獣。体型は猫に似ているが、大きさは一般的な猫よりも大きい。それに、耳もウサギのように長く、尻尾と同じような細い楕円形だ。

猫のような獣は低く唸り、臨戦態勢に入っているのが分かる。「うっ、」虎若が唸る。反射的に駆け寄ろうとしたが、やはり体が動かない。

獣の口元が紫色に光っている。俺は、直感した。

まずいっ!攻撃が来る!!










「ルカリオ!波導弾!!」



青い球体が猫のような獣の足元に放たれる。砂埃が巻き上がり、緋色の光が消えると、体が動けるようになった。俺は急いで倒れている虎若へと駆け寄る。



「虎若!!大丈夫かっ!!」

「んっ、たけや、先輩…!?」

「虎若、何があったんだ?」

「ぼく、厠へ行こうとして、そしたら普段は使われていない倉庫の扉が少し開いてたから、中を除いたら、突然何かがすごい勢いで突進してきて…」





「君たち、ちょっと下がってて。危ないから」









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