うぇるかむ・わーるど










「お待たせしました。ポケモンたちはみんな元気になりましたよ」

ジョーイさんにお礼を言って6つのモンスターボールを受け取る。ウエストポーチにしまって、代わりにバッジケースを取り出す。開けるとそこには5つのバッジが収まっている。カロスリーグ出場まであと3つだ。



『次はトライポカロンですね、主』

ボールの中からテレパシーで話しかけるルカリオ。普通のルカリオはテレパシーは使えないはずなのだが、卵をくれたゲンさんが言うにはこの子は波導の力がとても強く、ルカリオの中でも特別らしい。不思議だ。

「そうだね」と返事をしてポケモンセンターの自動ドアをくぐる。私はカロスリーグとトライポカロン、両方に挑戦中だ。トップコーディネーターを目指す私は、このカロス地方のトライポカロンというのを知って、ずっと考えていた。挑戦してみたいと。何を隠そう私はポケモンを見せることが苦手だ。コーディネーターとして「それはどうなんだ」と生意気な弟に言われたこともあるが、苦手なのだからしょうがない。そこで、集中的にパフォーマンスの腕を磨こうとカロス行きを決めた。そして、バトルの腕が鈍らないようにするためとレベルアップのためにジム戦に参加することにしたのだ。大変なこともあるがやりがいは2倍、楽しさも2倍だ。



「さーて、それじゃ、次の町へ向けてしゅっぱーつ!!」




















目の前には見事なスカイブルーが広がっている。抜けるような空というのはこういうのを言うのだろう。そして体を反転させると黄土色の地面がみるみる近づいてくる。いや、近づいているのは私自身だから地面に近づいている、といった方が正しい。





「ぎゃあぁぁぁあああああ!!!」





ど、う、し、て、こ、う、なっ、た。

ありったけの空気を吸って、声を張り上げた。今、私は空中を真っ逆さまに落ちている。このままではあと数十秒で地面とこんにちはしてしまう。ポケモンセンターを出たら空に放り出されるとか一体どんな状況だ。

近づく衝撃に覚悟を決めて私はギュッと目をつぶる。

すると、体全体に浴びていた風圧がふっと消えて、代わりに滑らかな感触。そおっと目を開けるとなじんだオレンジ色が目に飛び込んだ。

「リザードン!!!」
「グォ」

リザードンは大丈夫だと言うようにぐっと親指を立てた。さすがはカントーから共に旅をしてきた相棒、頼りになる。私は安心してぎゅっと彼の逞しい首に腕をを回し、頬擦りをした。

地面に足が着いている安心感を踏みしめて、「ありがとう」とお礼を言い、リザードンのボールをウエストポーチにしまうと入れ替わりにルカリオが出てきた。



「ルカリオ、どうしたの?君が勝手に出てくるなんて珍し、」

『気を付けてください、主。奇妙な波導を感じます』

「何者だ」



突然背後から首に冷たくて堅いものが当てられた。ルカリオの表情と首に当たる感触からして刃物だろうか。両手も後ろ手に拘束されてしまった。

「な、何!?」
「動くな」

更に強く刃物を押し当てられ、首に食い込む。展開が急すぎて頭が追いつかない。

ルカリオの方を見ると後ろから刃物のような黒いものを当てられて両手を後ろで拘束されている。



「ちょっと、私の大事な仲間になんてことしてくれ、」

「もう一度聞く、貴様らは何者だ」

無視か、コラ。

「いや、とりあえずその物騒なモノを下げ、」

「どうやって侵入した」

「ねえ、とにかくその刃物をしまって、」

「黙れ、貴様はこちらの質問にだけ答えろ」

「…」

「貴様は何者だ。どうやって侵入してきた。その奇妙な格好と生き物はなんだ。貴様はどこの城の者だ」





「人の話を聞けぇぇぇええええ!!ルカリオ、神速!!!」









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