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※名前固定です





「ミナトさーん、オムライス1つー」



夕方の酒場は人でごった返している。そこそこ込んだお店の中で私はせわしなく動きながらマスターであるミナトさんにお客さんからの注文を告げる。



「ビール2つ、お待たせしましたー」

「おう、ユキちゃん、すっかり板についてきたなー」

「初めのころはおたおたして注文はミスるし声は聞こえにくいし、ひどいもんだったけどなー!」

「もうっ!ひどいですよっ!そんなに言うなら今日はツケてあげませんからね!」

「あっははっ!随分頼もしくなったもんだっ!」



常連さんのからかいにおどけて返すのも慣れたものだ。ここに来たばかりのころは酒場というモノに不慣れでどうしたら良いか分からなかったのに。



「ユキちゃん、バーボン2つ、奥のテーブルによろしく」

「了解でーす」



"ユキ"と言うのは、私の愛称だ。

男っぽい本名は親が付けてくれた名前でも年頃の乙女としてはあまり呼ばれたくないというのが本音である。

幸いこの世界は名前すら分からない孤児と言うのは珍しくない。身分を証明するための手段もはっきりしないし、店の前で行き倒れていた私は、猶の事不信感を抱かれなかった。



私がいたところでは、身元不明の人間を雇ってくれるところなんてなかっただけに、この店の店主であるミナトさんが行くところがないならここで働けば良いと言ってくれた時は驚いた。

なんせ以前勤めていたところでは新入社員の力量を図るために事務所を上げて騙すような入社試験を行うから。

こんなにあっさり職が手に入って良いのだろうかと、不安になったほどである。



それでも、この世界が平和と言うわけではない。どこの世界にも無法者はいるものだ。





「ユキちゃん、食事の材料足りなくなりそうだから、買い出し行って来てくれる?」

「了解しました!」



足りない材料を記したメモを受け取って、買い出しに向かう。









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