※卑猥な表現含みます 洞窟の入口に男が立っていた。 蘇芳色の着流しを着ており、年齢は見た目からして20代後半。タレ気味の目元と日に焼けたこげ茶色の髪が優し気な印象を与える男性だが、男の笑みはどことなく不気味だと感じた。 あの時、私に声をかけた男に間違いない。けど、なんだろう…。それ以前にも、どこかであったような気がする。 「この女性たちを殺したのは貴方ですか」 「殺すつもりはなかったんですよ。ちょっと激しく愛してあげただけです。けれど、彼女たちには僕の愛を受け止めることが出来なかったんですね」 貴女は彼女たちより頑丈だといいのですが、といいながら男はゆっくりと近づいてくる。その言い草にゾワッと悪寒が走る。 男は笑みを湛えたまま近寄ってきて、着物の合わせ目に手をかける。 間近で男の顔を見て、思い出した。バイトに行く前に、私たちに声をかけた飛脚風の青年だ。 「あの時私たちに声をかけたのは、子供よりも私の方が目当てだったってことか…」 「おや、気が付いたんですね。連れの子供に声をかけた方が、警戒心を抱かれにくいと思ったんですが、あれは失敗でした。折角あんな演技をしたというのに」 「こんなことしてタダで済むと思ってるんですか。それ以上近づいたら今ここで舌をかみちぎって死にますよ」 「おやおや、それは困りますね。ですが、貴女にはそんな力は残っていないはずですよ」 「はっ、何、いって…」 続けようとしたはずの言葉が言葉にならなかった。体が重く、ひどい倦怠感に襲われる。バタバタと動かしていた手足が思う様に動かなくなり、何か言おうと口を開いても金魚のようにぱくぱくと口が動くだけで声にならない。 「やっと効いてきたようですね。貴女が眠っている間に僕の調合した薬を飲ませたんです。それ自体には人を死に至らしめるほどの威力はありませんが、体が思う様に動かないでしょう?」 どうやら眠っている間に更に薬を盛られたらしい。なんてことだ。 男はゆっくりと顔を近づけて私の唇に自分のそれを押し付ける。舌を噛み切ってやろうと口を開いたが、力が入らず舌が思う様に動いてくれない。それどころか中途半端に開いた口内に奴の舌が侵入してくる。舌を絡め、歯の裏側や歯茎の口をなぞる。ちっ、気持ち悪い。 「真っ白な肌。まるで雪みたいですね」 「アンタ、なんかに、ほめ、ら、れても、うれし、く、な、」 男は着物の合わせ目から手を滑りこませ、胸に手を当てる。晒を外しながらも頬や首筋に唇を当て、時々甘噛みする。男の舌がまるで生き物みたいに肌を這う感触に吐き気がする。 晒を外し、双房があらわになると男は一層笑みを深くする。右側を揉み拉き、左側はその頂を下で転がし時々吸い上げる。気持ち悪くて自然と顔がゆがむ。 こんな男に体を許したくなんかないのに。 虫唾が走る。 顔をそらし、出来る限りバタついて抵抗する。けれど、手足を縛られている状態、薬を盛られて動きが鈍くなっているというこの状況ではほとんどその抵抗も意味をなさない。それどころか、無理やり動いたせいで。着物がはだけて下半身があらわになり、手足に縄が食い込む。 「そうそう、こういう乱れた着物の隙間から見える肌とか、いいですよね。とても綺麗ですよ」 前髪にそっと口づける。動かない私をまるで人形のように扱うこの男に激しい怒りと気持ち悪さを感じる。こいつはもはや異常者だ。 "その体と超能力を使えば簡単に落とせるだろう、しっかりやれ" "お嬢ちゃん、一人?いっしょに来ない?" "寂しいんでしょ?俺が相手してあげよっか?" "子供のくせにいい体してんな" "あそこの締まり具合、サイコー" ああ、なんで今、昔のことなんか…。 「いろんな男を食ってきた割に綺麗なカラダですね。ほらココも」 「…っなん、で、」 「ふふ、分かりますよ。あそこで山になっている者たちは男を食い物にしてきた女です。私みたいな男をね。貴方も同じ匂いがしますよ」 黙れ お前に何が分かる 膝を割って、割れ目を撫でる。 この男に自分の性器を触られたという事実に悪寒がして、背筋に嫌な汗が伝う。 怒りと羞恥でかっと顔が熱くなる。 やめろ 気持ち悪い 触るな シンプルかつ強い感情が体中を駆け巡る。 「泣いてるんですか?大丈夫、痛くしませんよ。優しく抱いて差し上げます」 「あんた、なんか…、に、」 「おや、まだ口が利けたんですね。でも、誰も助けに来ず、たった一人の貴女に何ができるんです?どうせ、誰からも必要とされていないから、貴女は今ここで私の下で涙を流しているのでしょう?」 "誰も助けに来ない" "たった一人" "誰からも必要とされてない" わかってる。そんなこと、自分が一番。 「貴女は私のものです」 うるさい。黙れ。知っている。分かっている。触るな。聞きなくない。気持ち悪い。嫌。イヤ。いや。 「………いやぁぁぁあああああ!!!!!!」 |