可憐な非日常 | ナノ



えっと、あとは作法委員会と体育委員会だな…。

残り2枚になったプリントを持ってあと2人の委員長さんを探す。



確か、作法委員会は立花君…。

春がこの世界に来た日にしっかり彼の情報を視たから覚えている。透視能力で立花君を探すとどうやら自室にいるらしい。




















"立花仙蔵""潮江文次郎"と札のかかった部屋に到着した。



「失礼しまーす。立花君、委員会の書類を届けに来たよ」



どうやら部屋で書き物をしていたらしい彼は私を一瞥して視線を机に戻し、顎をくいっと上げた。机の上に置けということらしい。

何も言われないならその方が良い。

机の上にプリントを置いてそのまま立ち去ろうとしたら、立花君に腕を引かれた。びっくりして思わず振り返ると、真剣な表情の立花君が私を見上げていた。



「お前たちのことを調べた」

「…それで何か情報は得られた?」

「お前たちに関する情報は何一つ出てこなかった。出生もその不思議な力についてもだ。お前たちがどこの何者で何が目的でこの忍術学園へ来たのか、お前たちの着物や持ち物の構造がどういうものなのかもわからなかった。」



立花君は私から視線を外すことなく言葉を続ける。



「お前はその超能力、とやらを使って何をするつもりだ」

「…やっと現実に目を向ける気になったんだ。どうしてそういう考えに至ったのか訊いてもいい?」

「常識では説明のつかないことだがな。お前たちの身なりや知識はこの世界では異質だ。お前の持ち物も我々の技術では到底作り出せるものではない。何より、その不可思議な力。そんな力を持っていてお前が不信に思われるようなへまをするとは思えん。だから、こことは勝手が全く違う場所から来たのだという結論に至ったのだ」

「お見事。君、世渡り上手そうだね」



"頭がいい"という言葉は一般に勉強ができるとか試験の結果が良いとかいう意味で使われる。

もちろんそういう面もあるだろうが、彼の場合はそれ以上に物事を落ち着いて見極め、状況に応じて臨機応変に対応するということに長けていると見た。



「それより質問に答えろ。お前こそ、その力があれば随分と生きやすかろう。その力で何をするつもりだ」

『こいつの言葉を信じるなら真の脅威はむしろあの男よりもこの女だ。忍でないなら情報屋かもしれない。いずれにしても学園の情報を外に漏らされるわけにはいかない。それにもし、忍術学園と敵対する城にでも付かれたら、…厄介だ』



おや、びっくり。

庵で簡単に説明しただけだというのに彼はよくわかっているようだ。情報の重要性というものが。

学園の生徒の中には、いざとなったら女の私を人質に春に言うことを聞かせようと思っている連中までいるようだが、生憎私はそんな柔な人間ではない。

っていうか、情報屋っていいな。お金に困ったらそうしよ。



「別に何もするつもりはないよ。私も春も自分たちがいた場所に帰りたいだけ。そのためには、ここにいるのが一番帰れる可能性が高いからここにいるだけ。だから、今のところどこかのお城にここの情報を売ろうって気はないよ。変な小娘が下手なこと言って怪しまれたらどんな目に合うかは想像つくしね」

「?!やはり心が読めるのだな」

「まあね。これは精神感応っていうんだけど、興味ある?」



立花君は顎に手を当てて『私の思考が読めるか』と思っている。

手は掴んだままだが目は合わせない。おそらく表情から気持ちを読み取られることを恐れているのだろう。



「うん。読めるよ」

『やはりそうか。私の名や所属する委員会、同室のことまであの短期間でどうやって情報を得たのかと不思議だったのだが、お前が他人の思考を読むことが出来るというなら合点がいく。便利なものだな』

「まあ、そうかもね。っていうか、普通に会話しない?」

『まあ待て』



立花君はそう言って楽しそうに笑う。うわあ、なんか蕾見管理官とか兵部さんの人をからかう時の笑顔に似てる。

私は座るように促され、精神感応を使ったおしゃべりにしばらく付き合う羽目になった。










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(では、動物なら何でもあのように会話できるものではないのですね)
(まあ、そうだね。ここの動物たちが特別賢いんだと思う)
(しかし、面白いですね。椎名さんの世界ではそのような力は一般的なものなのですか?)
(超能力者はそんなに多くないよ。特に私や春みたいな高超度超能力者はね。っていうか、敬語…、しかもさんって…)
(年上の女性にいつまでもあのような話し方は失礼かと。何か問題がありますか?)
(いや、別に…)

敬語で話されることとか苗字にさん付けされることとか、慣れてないヒロイン。













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