可憐な非日常 | ナノ

「ふぁ〜、なんだってこんな朝っぱらから…」



寝起きで目をこすっている春と一緒に大川さんの庵に続く廊下を歩く。

春先の早朝は寒い。布団から出るのがつらかった。



「ほら、しゃきっとして。あと、欠伸する時は口を隠すもんだよ」



首だけで振り返って春に言うが、「んー」と返事とも言えない返事が帰ってきた。

どうやらまだしっかりと目が覚めていないらしい。

起こす時も苦労したが、こんなに寝起きが悪いとは。さっさと起こして庵まで瞬間移動してもらおうと思っていたのに。こんな状態ではどこに行ってしまうやら。怖くて瞬間移動など頼めない。まあ、だからこうして肌寒い廊下を歩いているわけだが。





そうこうしているうちに大川さんの庵の前に着き、ひと声かけて戸を開ける。



「昨日はよく眠れたかの?」

「ええ、まあ」



正直、天井裏の気配が気になってなかなか寝付けなかったが、それを言ったところでどうしようもないだろう。春も昨夜はよく眠れなかったようだ。普段から寝起きが悪いのだろうが、今朝は低血圧に拍車がかかってるような気がする。庵に入って正座した途端、こっくりこっくりと船をこぎ始めた。

大川さんも生徒たちが昨晩どんな行動に出たかは予想がついてるだろうが、それについてはあえて触れなかった。



「そうか、それは何よりじゃ。これから全校生徒にお主らのことを紹介しようと思うての」

「生徒さんたちは私たちのことを知ってるんじゃないんですか?私がここに来てからずっと交代で見張っていたでしょう」

「ほお、分かるのか?それも超能力というもののおかげかの?」

「ええ、そうです。先日説明した透視能力と精神感応能力です」



特に、昨日は随分と人数が多かった。深緑色の装束を着た少年が6人。うち、2人は直接降りてきて私たちのことを探りに来たが、まあ、それも失敗に終わった。しばらくは天井裏にいたようだが、朝になったら見張りは土井さんと40代くらいの男性になっていた。



「これから忍術学園のお手伝いさんとして働いてもらうのじゃから、自己紹介はしておくものじゃろう」

「分かりました」

「うむ、では、校庭に向かうとするかの」



そう言って大川さんは手をついて立ち上がる。



忍者の学校なわけだし、私たちのことはもう広まっているだろう。

あることないこと噂が飛び交ってるかもしれない。

昨日、あの場にいた先生たちと6年生たちは超能力のことを知ってるが他の生徒は知らないはずだ。隠していた方が無難だろう。

私たちは元の世界に帰るつもりだし、簡単に済ませたんでいいよね。異世界人である私たちがいることでこの世界にどんな影響を及ぼすか分からないし。なるべく、かかわりが深くならないようにしないと。



いろいろ考えていたら、戸を開けて部屋を出ようとしていた大川さんが振り返った。



「なに、そう固くなることはない。気楽にすればよい」

「はあ…」



そういうことを悩んでいたわけじゃないんだけど、………まあいっか。

私も大川さんに続いて庵を出る。

その前に、そろそろ具体的な手段に出なければならない。










いい加減起きろ、春。











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