すっかり嫌われたものだ。 少年が去っていった方を見ながら、ため息を一つ。超能力のことがばれてなきゃもうちょっとうまくやれたと思うんだけどな…。 「ねえ、ここら辺一体に穴掘ったの君だよね」 私は後ろの木に向かって話しかけた。正確には木陰に隠れている少年に向かって。 「気づいてたんですか」 姿を現したのは紫色の装束を着た少年だった。平君と同じ色だから4年生か。 「ここら辺一体タコ焼き器状態だよ。何でこんなに穴掘ってんの」 「穴じゃありません。蛸壺です」 「…何でこんなに蛸壺掘ってんの」 「その縄、用具倉庫のものですね。どうやって持ち出したんですか。この時間は用具委員がいるはずです」 私の質問は無視か。 「貴方が落ちないから学園中に蛸壺作ってみたけど全然だめでした。落ちるのは不運委員ばっかりで…」 紫色の少年は残念そうに首を左右に振る。動きに合わせてゆるいウェーブのかかった長髪が揺れる。 「不運委員?」 「こんだけ掘ったら落ちないようにする方が難しいです。貴方、どうやってるんですか?」 「ねえ、私の話は無視?」 「どうやってるんですか?」 「はあ…、どうやっても何も視て避けてるんだよ。忍者の学校なら罠とか仕掛けがあってもおかしくないって警戒するのは当然でしょ」 ただでさえ私は嫌われてるんだし、と肩をすくめて笑う。 「視るって、そんなことどうやって?」 「こうやって」 口で説明するより見せた方が早いかと私は忍術学園のグラウンド全体を透視した映像を精神感応で少年に送った。 少年は一瞬驚いたように目を瞬いたけれど、反応はそれだけだった。リアクション、薄いな。 「これがちょーのーりょくですか」 「そうだよ」 「ふーん、便利ですね。でも、僕らにとっては厄介です」 少年はそれだけ言って去って行った。 ++++++++++++++++++++++++++++++ (………変な子) |