可憐な非日常 | ナノ




「春、いつまでもそんなところでサボってないで掃除手伝って」

「やだよ、めんどくさい。大体、俺ならそんなことしなくても瞬間移動で簡単に集められるし」

「そうやって瞬間移動能力にばっかり頼るから肥満気味なんでしょ。BMI値やばいじゃん。少しは動きなさい」

「だからそれが面倒なんだってば」



さっきからこの繰り返しである。

私は正門の掃除、春はサボりだ。(春にそんな理屈を言っても意味がないので)衣食住を保証してくれる分、働けとは言わない。けれど、体のために動いた方が良い。切実に。

春は見た目は細いわりに肥満気味だ。将来サルコペニア肥満になっても知らないからな。



「大体、春は…『はあ、また不運が…』…ん?」

「どうかしたか?」



小言が途切れたのが不思議に思ったのか、塀の上から降りてきた春が私の前に立った。



「いや、今なんかネガティブな思考を拾ったような気がしたんだけど…」



言いつつ、透視能力で周辺を見てみると誰かが落とし穴に落ちているようだ。しかも結構深い。

私は春に見た映像を精神感応で伝えて尋ねた。



「人助けと掃除、どっちが良い?」



春は肩をすくめ私から箒を奪った。代わりに私の手の中には長くてしっかりとした縄。どこから…、って聞くまでもないか。

私は縄を持って落とし穴に落ちている少年を助けるべく駆け出した。





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(あれ〜)
(どうした?喜三太)
(食満先輩、縄が一本足りません〜)









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