02-06
問い
貴方の武器はなに。
「お、おかえりなさい」
不甲斐なくも、私が宿から飛び出すことはなかった。
自分の命の方が大切で、私なぞが行かなくても物語が進むことを知っていたから。宛ら予知夢のようである。
彼らが知らず、私にだけ分かること。
だからこそ、私は動かないことが正解だと、そう感じていた。
これは傲慢でも怠惰でもなく、より効率的な旅のすすめなのだと。
意味のわからない言い訳を心の中で零す。
そんなくだらない言い訳をしているうちにも、傷付いた彼らを癒そうと、乙女たちは目の前で忙しなく働きだした。
砂漠の少年が負った怪我も痛々しいが、大の男2人が負った擦り傷のような火傷も大層痛ましい。
ハッとして手を伸ばしかけ、
ダラリと垂らす。
気まずさが先立った私には、彼らの傷を優しく包み込んでやることなど到底できそうになかった。
「ちょっといいかな」
変わりとばかりに呼びつけたのは白いお饅頭。
呼び出してもらうのは、あの願いを叶えてくれる美しい魔女。
水辺で誘うセイレーンのようでいて、破滅を招く傾城のような彼女。
等価交換だろうと、物々交換だろうと、この際気にしない。
私には確かに彼女の力が必要で、願いが叶うならかの華麗なる戯曲に登場するファウスト博士のように、悪魔にすら身を委ねてもいいと思いはじめていた。
この旅に必要な力を、私はなに1つ手にしていない。
それこそが何よりも私を卑屈で最悪な人間に陥れる要因だと、信じて疑っていないから。
力さえあれば。
この身を守る、力さえあれば。
望むものの大きさと、
失うものの大きさ。
等価交換ならば結論辿り着くのは無だ。
所持していた物を失う喪失感が少しばかり偉大なだけで、実質の存在価値には何1つ不平等などないのだ。
ないはずなのだ。
だからこそ、
私は求めなければならない。
答え
その貪欲さ