Lust | ナノ

なまえの部屋で上着を脱いだ品田を見つめてパチパチと瞬きしながら、なまえがそっと手を伸ばす。
品田さんの腕、すごく逞しいですね。
そう言って品田の二の腕に触れるなまえの表情は感動と好奇に満ちていて、ふにふにと揉むように触れるその動きに品田は必死の思いでにやける顔を引き締めた。
嗚呼もう、そんな風に触られたら誰だって勘違いしちゃうよ…。
心の中でなまえに訴えた言葉は、それでも口に出すことは出来ず仕舞いだった。


「そ…そんなに逞しいかな」
「逞しいですよ!品田さんの腕、すごくムキムキですもん」


良いなぁ、品田さんに守ってもらえる人は幸せだろうなぁ…。
今度は羨望の眼差しで品田の二の腕に視線を注ぐなまえに、ぐらりと心が揺れ動く。
これはもう勘違いではなく、攻め時と捉えても良いんだろうか…なんて葛藤が品田の理性を蝕み始めた。


「ね、なまえちゃん…あのさ…」
「はい?」
「その…俺が守りたいのはなまえちゃんだけだよ?」


ものすごく遠回しながらも気持ちを伝える品田の目には、今度はどこか苦悩したような表情のなまえが映し出される。
早まりすぎたんだろうかと慌てふためく品田に、なまえから告げられたのはまたしても勘違いしてしまいそうな一言だった。


「でも…私やきもち妬きだから…」
「あのー…なまえちゃん?」
「仕事だとしても、品田さんが女の人にいろいろその…触れられるの、妬いちゃいますし…」


肩を落として項垂れるなまえの姿がこの上なく愛おしくて、品田の両腕が気付けばなまえの身体を包み込んでいた。
驚いたのか身体を強張らせたなまえは、それでも遠慮がちにそっと品田の背中へと腕を回した。
抱きしめてみると尚更込み上げる愛おしさは、自然と品田の頬を緩ませていった。


「ね、俺うぬぼれっちゃっていい?」
「品田、さん…」
「なまえちゃんが俺のこと好きなんだって、そう思っちゃってもいい?」


頭ひとつ分は違うなまえの耳元に唇を寄せて問いかけてみれば、背中に回されていたなまえの両手がぎゅっと品田の服を握り締めたのが判った。
密着して初めて判ったのは、なまえの身体がとても柔らかく、そしてふわりと良い香りが漂っているという事。
五感全てで感じ取るなまえという存在に、品田の身体はじわりじわりと熱を帯び始めた。


「俺さ、実はずっと…仕事で行った店の子をなまえちゃんだと思って接してたんだよ」
「あ、の…」
「頭の中で…俺、いっつもなまえちゃんのこと穢してた」


ホントにすげー好きなんだ、なまえちゃんが。
するすると身体のラインをなぞるように指を走らせると、その度にひくひくと身体をくねらせるなまえの唇から押し殺した声が漏れる。
こっち向いて、と小声で囁きかけてみれば、遠慮がちに視線を上げたなまえの瞳がすっかり熱を帯びていたのが品田には嬉しかった。


「ホント、なまえちゃん可愛すぎ…」
「っ、品田さ…」
「ね…軽蔑した?俺のこと」


小さく何度も頭を振って否定してみせるなまえをぎゅうっと抱きしめると、品田の唇がなまえの唇に重ねられた。
触れただけで直ぐに唇を離してみれば、品田の目にはすっかり熱を帯びたなまえの瞳が映し出される。
俺だけになまえちゃんを守らせてよ。
静かに囁きかけたその後で、品田はもう一度なまえの唇を塞ぐのだった。

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