Lust | ナノ

突然振り出した土砂降りの雨に、なまえは冴島に手を引かれていかがわしい門構えのホテル前で雨宿りをしていた。
髪から服からずぶ濡れ状態の二人は、ほぼ同じタイミングでくしゃみをした。
思わず見つめ合ってくすりと笑顔が零れたが、段々と冷えていく身体には震えが起きる。


「なまえ、こんなところで雨宿りした縁やと思うて、一旦服乾かそか」
「そうですね…風邪引いちゃいそうですし…。この際場所は贅沢言えませんね」


互いに言い訳をしながらラブホテルへと足を踏み入れると、冴島は適当な部屋番号を選んでエレベーターのボタンを押した。
敢えてなまえの方を見ずに居たのは、冴島なりの下心がないというアピールだったのだが、なまえからすれば視線の逸らし方が不自然すぎて逆に微笑ましいほどであった。
数階上がった先で点滅を繰り返す部屋番号の扉を開ける冴島の背中を追って中に入ると、広々としたベッドがやけに目に付いた。


「なまえ、とりあえずそこのバスローブにでも着替えとき」
「あ、はい…。……あの、」
「…心配せんでもちゃんと後ろ向いといたるから。はよ着替えんと、ホンマに風邪ひくで」
「じゃあ、あの…着替えます」


なるべく視線を避けようとはしていたものの、張り付いた服から透ける淡い色の下着やくっきりと映るボディラインに、嫌でも冴島の心がざわつく。
振り切るようにしてなまえに背を向けたは良いが、衣擦れの音が聞こえるたびに段々と冴島の鼓動も速さを増してくる。
何か話した方が良いだろうか、それとも黙って待っていた方が良いのだろうかと思案するうちに、思考がどんどんとどつぼにはまってしまう。
仕方なく口を閉ざしたままで冴島も濡れた上半身の服を脱いでいるうちに、不意に視線の端になまえの背中を捉えてしまった。
目を逸らさなければと思えば思うほど、冴島の瞳がなまえの後姿に吸い寄せられてしまう。
背中に手を回し、自ら下着の留め金を外す姿に、冷え切ったはずの身体が一気に熱くなった。
耐え切れずそっと半裸のなまえを両腕に抱きしめると、びくりと身体を震わせたなまえから小さな悲鳴が上がった。


「冴島さん、っ」
「すまん…辛抱出来んようになってもうた…」


露になった胸を緩々と堪能しながら、冴島の唇がなまえの首筋に触れる。
白く柔らかな肌に触れる冴島の指は繊細なまでに優しく、それでも切羽詰ったように囁かれる己の名前に、なまえの心臓は高鳴った。
互いに晒した上半身は段々と熱を帯び始め、堪らずなまえは自分を包み込む逞しい両腕に縋りつく。


「なまえ…すまん、ホンマ…」
「も、謝らないでください」
「…ええか?抱いても」
「っ、はい」


振り向き様のなまえにキスをすると、冴島はなまえを抱いてベッドへと身体を沈めた。
最初は本当にこんな下心はなかったはずだったのだが、愛しいなまえを前にはさすがに冴島も耐え切れなかったのだ。
枕元のパネルで適度に部屋の明かりを落とすと、冴島の両腕が改めてなまえの身体を包み込む。
つん、と自ら鼻先を寄せてキスをねだるなまえに、自然と冴島の表情も柔らかなものに変わる。
深く口づけながらなまえの身体のラインをなぞる指に、びくりと竦む仕草ですらも冴島には愛おしかった。


「風邪引かんように、温めたる」
「はい、ぜひ…」


くすくすと嬉しそうに笑うなまえの髪を掬って口づけを落とすと、なまえの内腿を無骨な指先が這い上がる。
とろりと蕩けたなまえの瞳を見つめたまま、冴島の唇は柔らかな胸の突起を食むのだった。

rain

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