Lust | ナノ

「こら、なまえ…そろそろ止めとかんかい」
「や…だ、」
「嫌やあらへん、ええからもう言うこと聞いて止めとき」
「だって…冴島さんだって、真島さんだって、まだ…飲んでるのに…」


すっかり酔いが回ってしまった様子のなまえは、冴島と真島に連れられてやって来たバーのカウンターに座ったまま、ぎゅうっと冴島に抱き縋った。
ぎょっとしながらも照れくささでわたわたする冴島を横目で見ながら、真島はけたけたと声を出して笑う。


「俺の前でイチャつかんといてぇや、冴島」
「やかましわ…大体な、飲ませすぎたんは兄弟やぞ」
「ま、しゃあないやんか。酔うとるなまえチャン、可愛ぇんやから」


とろりとした瞳のなまえに抱きつかれている冴島としては、真島の言うことは逐一ごもっともである。
それでも、なまえがここまで無防備な状態を晒す原因となった真島にはそんな事など言われたくはない。
カウンター越しの店主に水を一杯頼むと、冴島は盛大な溜息と共に真島を睨みつけた。


「あんまりなまえで遊ぶんやない」
「判っとるて、スマンスマン。そないに怒らんでもええやないか、なぁ」
「ホンマにお前は…反省せぇや、兄弟」
「はいはい、と」


ニタニタ笑う真島を余所に、冴島は店主からグラスを受け取ると、それをなまえの唇へと押し当てた。
半ば無理矢理なまえに水を飲ませてやると、冴島はなまえを抱きかかえたまま席を立った。


「なまえを送らなあかんからな。先に帰るで、兄弟」
「ほな、ごゆっくり」
「…なにがごゆっくりや…、嫌な奴やで」


背を向けたまま手を振る真島を一人残すと、冴島はなまえの手を引いて店を後にした。
一歩外に出ると、肌には冷たい風が吹き付ける。
甲斐甲斐しくなまえに上着をきちんと羽織らせてやると、冴島はしっかりとなまえの手を取って歓楽街を歩き出した。


「なまえ、家まで送ったるわ。行くで」
「ん、」


のろのろとしたスピードで店から数十メートルほど進んだところで、なまえの足はぴたりと止まった。
おや、と冴島がなまえの顔を覗き込むと、顔を寄せた途端に冴島の唇になまえの唇が触れた。


「な、に…しとんねん、なまえ…」
「だって、冴島さんの顔が近くにあったから」


ぱちぱちと瞬きをするしかない冴島の耳には、なまえからとんでもない一言が待っていた。
もう少しだけ、一緒に居たいな。
俯きながらぽつりと甘い声で囁かれたかと思うと、冴島の厳つい手に指を絡めるように華奢な指が動く。


「ホンマにええんか?」
「はい…。まだ、帰りたくないです」


蕩けた瞳に見つめられては、自制など効くはずもない。
するりと大きな手でなまえの頬をひと撫ですると、冴島はなまえの手を引いてホテル街へと足を向けるのだった。

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