Lust | ナノ

冴島さん、冴島さん、と良く懐くなまえを、冴島自身も少なからず好ましく思っていた。
隣を歩く時に、遠慮がちにちょん、と己の小指を掴む仕草が可愛らしいと思えた。
いつもそれを合図になまえの手をしっかりと握ってやると、なまえは嬉しそうな笑顔を冴島に見せる。


「冴島さん、今日はどこに行きましょうか」
「どこでもええで。俺は今浦島状態やから、なまえの好きに案内してくれや」
「じゃあ、最初はアルプスでお茶しましょう」


ぴょんぴょんと跳ねるような足取りで冴島の手を引くなまえの姿に、気付けば口元が緩む。
なまえに連れられて神室町を歩き回るようになり、冴島はようやくこの町にも慣れてきたのである。
時折なまえの言う言葉の意味が良く判らないこともあるが、それでも冴島はなまえと共にぶらぶら歩くのが楽しみの一つになっていた。


「冴島さん、何ケーキ食べますか?」
「ケーキ?…せやな、なまえのお勧めで構へんで」
「ホントですか?実はもう食べたいのが二種類あるんです。冴島さん、半分こしてください」
「ああ、ええで。なまえの好きにしたらええ」


いつの時代も、女は甘いもんが好きやな。
ふっと笑いながらなまえの頭をぽんぽんと撫でてやると、途端になまえの顔がほんのりと染まった。
ふい、とその顔を逸らすなまえを追って冴島がなまえを覗き込むと、なまえは繋いでいない方の手で口元を隠しながら冴島の視線を逃れた。


「なんや、急に…」
「だって…冴島さんが…」
「ん?俺がなんや?」


冴島さんがそんな風に笑うから…。。
もごもごと告げながらちらりと向けられたなまえの視線に、冴島もどきりと胸を鳴らす。
己を見つめるなまえの瞳にいつもとは違う熱を感じ、なまえの手を掴んでいた掌にじわりと汗が滲んだ。


「…アカンな、」
「冴、島さん…?」
「お前の事、とっくに好きになっとったみたいや」


改めて気ぃついたら、なんや照れくさくてかなわんわ。
ガシガシと後頭部を掻く冴島に、なまえはくすりと笑い声を上げる。
私は最初からずっと冴島さんが好きでしたよ、と囁きかけるなまえに、今度は冴島が顔を染めるのだった。

だから、好き

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