Lust | ナノ

前髪の生え際に指を突っ込み一気に後頭部まで手櫛を掛ける秋山の仕草が、なまえの胸をきゅっと締め付ける。
少し疲れた表情を浮かべて溜息をつきながらされる秋山の行為に思わず見入っていると、なまえの視線を左頬に受けながら秋山がくすりと笑う。


「なまえ、そんなに見ないでよ」
「あ…っ、ごめんなさい」


慌てて視線を下げてみたものの、今度はなまえの右頬に秋山の視線が刺さる。
チラリと視線だけを上げて秋山の方を覗き見てみると、ばちりと重なった互いの視線がやけに恥かしかった。


「どうしたの?今日のなまえ、随分俺のこと見てるけど」
「あの…、ごめんなさい」
「謝らなくていいからさ、教えてよ。どうしてそんなに…俺を見てくれるの?」


にこりと微笑まれながら距離を詰められると、それだけでなまえの頬が熱を帯びてしまう。
隣り合うソファの上、近くに感じられる秋山の息遣いがなまえの心臓をきつく締め付けた。
膝の上に乗せられた手が思わず拳を作ると、ふっと吐息だけで笑った秋山がその拳の上に大きな手を重ね合わせた。


「秋山さんの、髪を掻き揚げる仕草…」
「ん…?」
「なんだかすごく…色っぽくて、好きだな…って」
「…だから、つい見惚れちゃった?」


わざと低く艶のある声で問いかける秋山に、なまえはもう言葉での返答など出来ない状態にさせられていた。
手の甲をさらさらと撫でる太い親指の感触が、全身に痺れるような感覚を与えていく。
小さく頷くだけで精一杯のなまえはもう勘弁してくれと懇願するような目を秋山へと向けるが、当の秋山はなんとも嬉しそうな表情を浮かべて満足そうに笑うだけであった。


「なるほどね…、だからなまえエッチの時もたまに俺のこと見て顔真っ赤にして固まってたんだ」
「っ、え…?」
「あれ、気付いてなかった?髪の毛邪魔で、こうやってグッて掻き揚げてる時…なまえ俺のことすごく欲情した目で見てくれるんだよ」
「や、だ…っ、そんな…」
「ん…?俺はやじゃないよ…。むしろ嬉しくて堪んない」


満足げな顔でなまえを見つめる秋山の瞳に、嫌でも全身が火照って収まらない。
無自覚な自分が今までどれだけはしたない視線を向けていたのかと思うと、なまえは秋山の顔などまともに見られる状況ではなかった。
堪らず秋山に背を向けようと身じろぐも、秋山の動きの方が僅かになまえを上回る。
先ほどからずっと重ねられていた手が引っ張られたかと思うと、なまえの頬は秋山の肩口に押し付けられる体勢に変えられた。


「なまえにそんな風に見られるの、俺すごく好きだな…」
「やだ…っ、も…」
「嫌じゃないって、ホントにすごく興奮する…。だってほら、俺もスイッチ入っちゃったし」


耳元に囁きかける秋山の手によって、なまえの身体が秋山の腰を跨ぐように座らされる。
ソファの背凭れに深々と背中を沈める秋山に上半身を引き寄せられると、図らずもなまえの胸元が秋山の顔に押し付けられる形となった。
その体勢を逃れるより早く背中に回された秋山の大きな掌によって身動きを封じられると、服の上からすう…と秋山が大きく息を吸い込んだ。


「ヤバいな…なまえを喰いたくなってきた」
「っ、駿……」
「嗚呼、なまえもスイッチ入っちゃた…?」


ね…もう一回、駿って呼んで?
甘えるような目で下からなまえを見つめる秋山に再度「駿、」と呼びかけると、途端になまえの唇は柔らかな感触に支配される。
唇が触れ合ったままで大好きですと囁くと、その言葉ごと秋山の唇が奪い取るようになまえの唇を食むのだった。

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