Lust | ナノ

はぁ、と頭上から盛大な溜息が漏れる。
その溜息に反応したなまえが顔を上げてみると、眉間に皺を寄せた峯と目が合った。


「女が簡単に男に抱きつくもんじゃありませんよ」
「ごめんなさい…」


渋々、といった表情を貼り付けたまま峯の腰に回していた腕を緩めようとすると、今度は峯の腕がなまえの背中に回された。
峯の胸の辺りにぎゅっと顔が押し付けられ、ちょうど頂頭部にこつんと峯の顎が乗せられる。
すっぽりと抱きしめられると、峯の香りにくらくらした。


「仕方ないですね…」
「峯さん…?」
「今日はなまえに付き合ってあげますよ。…まったく、よく甘える人だ」


だって、一週間ぶりですし。ずっと逢いたかったんです。
言いかけた言葉は唇から零れることなく、峯によって塞がれた。
いつもなら触れるだけで終わるはずの行為が、今日は終わる気配を見せない。
常日頃優しく触れてくれる峯にしては、口づけひとつとっても強引さが混じる。


「峯、さん…っ」
「すみません…結局俺の方ががっついてますね」


詫びるわりには口づけがどんどんエスカレートし、差し込まれた舌先で咥内が掻き乱された。
息苦しささえ覚えるほどの口づけに翻弄されていると、なまえの身体は突然ふわりと宙に浮いた。


「わ、っ…」
「狭いですけど、ここで我慢してください」


峯の腕に抱き上げられたのも束の間、なまえの背中はすぐ傍のソファの上へと下ろされた。
傍らに膝立ちで佇む峯と視線を重ねる間もなく、再びなまえの唇は峯の唇で塞がれる。


「高々一週間逢って居ないだけでこの様とは…」
「でも、私は嬉しいですよ」
「…それなら、良いんですが」


ほんの少し照れくさそうな表情を浮かべながらも、眉間の皺は相変わらず。
そんな峯ににこりと微笑んでみせると、今度は優しい口づけがなまえの唇へと降り注いだ。

触れるよりも近く

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