Lust | ナノ

煙草をふかしながら、龍司は両足の間に顔を埋める女の後頭部を見下ろした。
己の雄が立つところまではいったものの、それ以上反応を見せようとしない。
そんなものを懸命にしゃぶる女の様が滑稽である。
暇潰しに、と自分を親父と呼ぶ若い男がが呼んだその女の口淫は、決して下手ではないのだろう。
だが、龍司の其れには欲を吐き出すほどの魅力を感じないというのが事実であった。


「もうえぇわ…」


ふう…と紫煙を天井に向けて吐き出しながら足元に跪く女に吐き捨てるように言ってやると、プライドが傷ついたとでも言わんばかりの顔で女は龍司を見つめてきた。
それでも女の顔には見向きもせず、まだ長さの残る煙草を乱雑に灰皿へと押し付けると、龍司は纏ったものを脱ぎ散らかしながらバスルームへと足を進めた。
頭から温めのシャワーを浴びながら、龍司の頭の中にはなまえの姿が思い浮かぶ。
なまえの口淫はどうだろうかと、未知なる行為に身体が滾った。
無理強いをしてまで口淫をさせたいわけではないが、想像するだけでも興奮を覚えずには居られない。
熱を帯びそうな身体を綺麗に清めてバスルームを出ると、どうやら先ほどの女は既に部屋を後にしたようだった。
そもそもそんな女の存在など端から居なかったかのように、龍司はその女の影など探す素振りも見せない。
散らかしたスーツを身に纏うと、龍司は慌しくなまえの部屋へと足を急がせた。


「つまらんモンに付き合うて損したわ…」


道すがら、ぼそりと一人呟きながら、やはり龍司の頭の中にはなまえの顔がちらついていた。
これで改めて思い知らされたのは、もう二度となまえ以外の女を抱く気にはなれないという事実だった。
ずかずかと大股で歩みを進めながら、ようやく着いたマンションの前で龍司はふうと一息ついてエントランスをくぐる。
我が物顔ですいすいとマンションを進み、目的の部屋まで着くとポケットの中からキーを取り出して勝手に中へと押し入る。
ガチャリと音を立てて開けた扉の向こうには、電気の消えた真っ暗な部屋が目に入った。


「なまえ、居らんのか?」
「ん……」


迷わずベッドサイドへと歩み寄れば、眠たげななまえが身体を起こそうとしている姿が目に入った。
大きめのシャツと下着だけという格好がやけにそそられて、龍司は躊躇なくなまえを抱き寄せながら口付けた。
うとうとしながらも、なまえの腕が龍司の首へと回される。その様子が堪らなく愛おしくて、龍司は噛み付くように首筋に痕を残した。


「龍司さん、どうしたんですか?」
「ん…?何がや」
「だってこんな時間だし、連絡もなしに来るなんて初めてだから」
「アカンかったか?」


ふるふると首を横に振りながら、なまえの抱き縋る腕に力が込められてゆく。
寝ぼけた声で嬉しいと囁かれただけで熱を覚える己の身体に、自嘲気味な嗤いすら零れる。
なまえと共に身体をゆっくりとベッドに沈めながら、龍司の右手はなまえのシャツの中へと伸ばされてゆくのだった。

禁断症状

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