Lust | ナノ

蒼天堀をぷらぷら歩く龍司の背中を、なまえも何をするでもなく追っていた。
ゆったりと歩く背中は大きくて、見失う心配もない。
のほほんと緊張感もなく龍司に付いて歩いていたなまえは、突然龍司が振り返ったことにびっくりして足を止めた。


「なまえ、たこ焼きでも食うか?」
「あの…さっきお昼食べたばっかりですけど…」
「…せやな、」


くるりとまたなまえに背を向けた龍司は、再びぷらぷらと歩き始めた。
二人で昼食を食べてからまだ30分程度しか経っていないのに、どうしたのだろうか。
首を捻りながらも歩き出した龍司に付き従ってなまえも足を進めると、数分経った頃にまた龍司がくるりとなまえに向き合った。


「なまえ、喉渇かへんか?」
「私は平気ですけど…龍司さん、喉渇いたんですか?」
「わしの事はえぇねん」
「あの…」
「いや、なまえが喉渇いてへんねやったらそれでえぇんや」


またしてもなまえに背を向けて歩き出そうとする龍司は、あ!と突然声を上げてなまえに振り返る。
どうにも様子がおかしい龍司にそのわけを問うひまもないなまえは、どこか嬉しそうな表情を向ける龍司を黙って見つめ返す事しか出来ずにいた。


「ほんならなまえ、アイスやったら食うか?」
「いえあの…今はお腹いっぱいですし」
「…判らんなぁ、どないせぇちゅうんじゃ」


不貞腐れたような、困惑したような表情を浮かべてなまえを見つめる龍司は、いかにもな成りをしているのに幼さを感じさせる。
まるでなまえに振り回されているかのようなこの状況に、通りすがりに振り返る人も居るほどである。
そんなことは気にも留めず、なまえの手を取る龍司の行為があまりにも優しくて、なまえは堪えきれずに笑顔を零した。


「何、笑っとんねん…」
「だって、龍司さんさっきから挙動不審なんですもん」
「しゃあないやろ。デートちゅうもんがどないなモンか、わしは知らんのや」
「こうして手を繋いでぷらぷらしてくれるだけでいいんですよ」


龍司の逞しい二の腕にするりと腕を絡めながらなまえが告げると、反対側の大きな手がガシガシとなまえの頭を撫でた。
デートっちゅうモンは難儀やな、と零す龍司の横顔がどこか嬉しそうで、なまえは絡めた腕に縋る力を少しだけ強めた。

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