Lust | ナノ

真っ白なスーツが、驚くほどに似合っている。
そんな龍司の大きな背中を眺めながら歩いていると、やめぇやと照れたような声が降って来た。


「そんなに見んでもええやんけ、こそばゆいわ」
「あ、ご…ごめんなさい」
「背中に見とれられても嬉しないで」


にっと笑って再び歩き出す背中を、今度はちらちらと遠慮しながら盗み見る。
とても大きな背中である。いつもはもっと、歩幅も大きいのだろう。
今日はなまえに合わせて歩いていることが良く判るのが、なまえには嬉しかった。
怪我が治ったと連絡するや否や食事に誘われて着いて来たのだが、一体どこへ向かっているのだろうか。
本来住む世界が違うのだから、もっと警戒するべきなのに。
頭ではそう考えていても、素直に食事の誘いが嬉しかったなまえは、迷うよりも先にその誘いに応じたのだった。


「来ぇへんのちゃうかと思ってたんや」
「今日、ですか?」
「せや。なまえはんにとっちゃ、思い出したくもないやろ?うちのヤツらに絡まれたことなんぞ」
「そう、ですね」
「それにアレや、わしも堅気モンやないしな」
「…」


ちらりと肩越しになまえを気にする龍司の視線に、なまえはどきりとした。
強面ではあるけれど、龍司がどことなく優しげな視線をくれるから。
龍司の視線に思わず立ち止まりそうになったなまえに気付いたのか、ほれ、と龍司の大きな左手が伸びる。
なまえの右手がとても小さく見えてしまうほど大きな手が、微かに緊張気味に重ねられた。


「店はもうちょい行ったとこや。個室になっとるさかい、人の目ェは気にならんはずやで」
「わ、私そんなこと…」
「ええねん、ホンマのことやから。それになんや、わしもなまえはんとゆっくり話したいと思っとってん」


あ、そこのたこ焼きもなかなかイケんで。
返事をする前になまえとは反対側を指差した龍司に、なまえは笑顔をこぼす。
重ねられた龍司の手が熱いから、きっとなまえがどきどきしているのも伝わらないで済んでいるかもしれない。
すぐそこ、と言われた店に着いてしまうのがもったいないような、早く龍司とゆっくり話してみたいような。
もどかしくも幸せな気持ちに満たされながら、なまえはほんのちょっとだけ龍司の手をきゅっと握り返してみるのだった。

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