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そわそわと落ち着きない様子で柏木を覗き見るなまえに気付かない振りをしながら、柏木はぼんやりと書類を見つめた。
時々視線を書類から外してみると、なまえは時計を見たりキッチンを見たりとどうにも慌しい。
そんな様子をほほえましく思いながら、にやけてしまいそうな口元を引き締めていると、とうとうなまえが柏木に声を掛けた。


「あの、柏木さん」
「ん?」
「え、と…コーヒーでもいかがですか?」


ちらりと横目で腕時計に視線を落としてみると、時刻は15時ぴったりだった。
好きなタイミングで気にせず声を掛ければ良いものを、とついつい引き締めていた口元が緩んでしまう。
そうだな、一息入れるか。
なまえにそう告げて書類を手放すと、パッと弾けるような笑顔がなまえの顔に咲いた。


「じゃあ準備しますね。柏木さんはブラックですよね?」
「ああ、頼んだ」
「はい、ちょっとだけ待ってて下さい」


嬉しそうにパタパタとキッチンへ向かうなまえの背中を目に、気付けば柏木の頬に笑みが浮かぶ。
一体何をそんなに嬉しそうにしているのだろうか、と。
見ているだけで飽きないなまえの様子に、ついつい視線が釘付けになってしまう。


「お待たせしました、どうぞ」
「ん…これは?」


はにかむように笑うなまえが差し出したのはコーヒーだけではなく、小皿に並ぶスクエア型のクッキーがマグカップの隣に並ぶ。
そわそわしていた理由はこれか、と納得の行った柏木は、早速ひとつ手に取るとそのままぱくりと口に含んだ。


「久しぶりに食べるな、こういうの。うまいよ」
「実はこれ、遥ちゃんと二人で作ったんです」
「あぁ、桐生の」


遥ちゃんも桐生さんに渡したんじゃないかな。
嬉しそうななまえに目を細め、淹れたてのコーヒーを一口流し込むと、柏木はもうひとつクッキーを手に取った。


「俺も桐生もいい身分だな」
「?」


これだけ好いてくれる女が傍にいるんだからな。
にっと笑った柏木が、優しくなまえに囁いた後で二つ目のクッキーを一口で頬張る。
照れくさそうに頬を染めるなまえに気を良くしながら、柏木はコーヒーブレイクを堪能するのだった。

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