Lust | ナノ

「…柏木さん、煙草吸ってませんでしたっけ?」
「ん?吸ってるよ」
「でも私、二人で居るときに柏木さんが煙草を吸うところ…見たことないような…」


首をかしげて考え込むなまえの姿が愛らしい。
ぽんぽんと頭を撫でてやりながら気のせいじゃないか?と告げてみるも、なまえはどうやら納得していないようである。
だって今日も、ときょろきょろ部屋の中を見回すなまえは、事前に片付けてしまった煙草や灰皿、ライターを探し出せずに視線を柏木へと戻した。


「もしかして柏木さん、私と居るときは吸わないようにしてました?」
「ん…まぁな」
「いいですよ、そんな気を遣っていただかなくても」
「いや、良いんだ。もったいないからな」


指通りの良い柔らかななまえの髪を弄びながら、柏木はソファに並んで座るなまえの顔を真正面から見つめた。
案の定びくりと身体を強張らせるなまえに笑いかけながら、柏木は指先に掬ったなまえの髪に口付けた。


「一緒に居るときは、お前の香りを楽しみたい」
「か、柏木さん…っ」
「お前、本当に良い匂いだよ」


消え入りそうな声でヤ…と囁くなまえを余所に、柏木はなまえの頭を包み込むように腕を回しながら、そのままなまえの首筋へと顔を埋める。
鼻先がなまえの柔肌に触れたまま、するすると首筋を下る。
唇になまえの鎖骨がぶつかると、柏木はわざと音を立てて其処に口付けた。
びくんと跳ねるなまえの身体が愛おしくて加虐心を掻き立てられたが、弱弱しく抵抗しようと柏木を押し返すなまえの求めに応じて、柏木は一度なまえから身体を離す。


「そういう声で鳴かれると、俺も止められなくなるぞ」
「だ…だって柏木さんが…っ」
「俺が、なんだ?」
「こんなこと、するから…」
「こんなことって、どんなことだよ」


耳元で問い続ける柏木に、意地悪、とか細い声で反論するなまえにふっと笑がこみ上げた。
いちいち可愛らしいのだから、意地悪をしたくなるのも仕方がない。
この場で押し倒してやりたい衝動を抑えながら続きは後でな、と囁いてやると、なまえは案の定頬を染めてぷいと顔を背けてしまった。


「好きなコほど苛めたいってやつでね。お前が思ってるより子供なんだよ、俺は」
「もう…」
「いいじゃねぇか、お前の前だけなんだから」


照れていても拗ねていても、なまえの見せる表情全てが愛おしいのだ。
顔を背けたままのなまえの頬をつつきながら、お前と居たら煙草なんて吸うヒマないんだよ、と柏木は心の中でつぶやくのだった。

もっともっと強く

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