Lust | ナノ

今夜、時間空けといてくれ。
その言葉のわけを尋ねることもなく、なまえは素直に予定を空けていた。
19時にミレニアムタワーの前で、と待ち合わせのメールをもらい、その時もなまえは素直に柏木の言葉に従った。
10分ほど前に指定の場所へと着いたのだが、柏木は既に到着していたようで、なまえを見つけると口元に笑みを浮かべて手招いてくれた。


「遅くなってごめんなさい」
「遅くはないだろ、10分も前なんだから」
「でも、柏木さんを待たせちゃったから…」
「気にするな、俺が早く着きすぎたんだ」


さて、行くか。そう言ってなまえの手を取る柏木に引かれて、なまえは慌てて声をかけた。
柏木と手を繋ぐことは初めてで、急に胸が高鳴った。


「あの、柏木さん…行くってどこへ…?」
「ああ…言ってなかったか?俺の家だ」
「っ、え…?」


ぴたりとなまえの足が止まる。
なまえにつられて足を止めた柏木が振り返ると、心なしかなまえの耳が赤く染まっている気がした。
思わずふっと笑いがこみ上げ、柏木はその初心ななまえをからかいたくなった。


「なんだ、俺の家じゃ不満か?」
「いえ、そんなこと…っ」


繋いだ手とは反対の手で、柏木はなまえの頬を撫でる。そのまま耳朶に触れてみると、なまえはぴくりと身体を震わせて潤んだ瞳を向ける。
可愛い顔しやがって…。心の中でつぶやきながら、柏木は加虐心から更になまえに触れる。
優しく顎を掬ってなまえの下唇をなぞってやると、いよいよ自制が利かなくなりそうな感覚に陥った。


「好いた女を家に呼ぶことくらい、普通だろ?」
「それって、あの…」
「何だよその顔は。お前のことだよ、なまえ」


笑顔を向けた後で再び歩き出そうとすると、なまえは立ち止まったままで柏木の手を引っ張った。
もう一度くるりとなまえに向き合ってみれば、今度はなまえの顔は頬まで真っ赤に染まっていた。


「あのっ、今のってその…」
「要は、俺はなまえに惚れてるってことだ」
「ほ…ホントにですか?からかってるんじゃなく…?」


照れるなまえに思わず声を上げて笑うと、柏木は強めになまえの手を引いて歩き出した。
歩幅を抑えているつもりだったが、なまえはぱたぱたと小走りになっているところをみると、どうやら気持ちが逸るのを抑えきれていないようだ。


「そんなに不安なら何度でも言ってやるよ。だから早く行くぞ」


騒がしい街並みからさっさと抜け出したい一心で、自然と心が急く。
それでもなまえの手を引きながら歩く時間ももったいなくて、柏木は一人心で葛藤するのだった。

何度でも言うよ

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