Lust | ナノ

あづー…とだらしない声を上げる真島は、風呂上がりの火照った身体をそのままにスエットの下だけ履いた半裸の状態のまま冷蔵庫の扉に手をかけた。
首からだらんと垂らしただけのバスタオルには、濡れた髪の毛からぽたと滴が落ちる。
冷蔵庫を開けて中を物色する真島の目的はキンキンに冷えたビールであったが、そのお目当てのものに手を伸ばすより早く、真島の般若にはぴたりとなまえの身体が吸い付いた。


「…ん?なまえチャン、まだ汗引かんから引っ付かん方がええで」


背中、ベタっとしとるやろ?
真島の問いかけに答えないなまえの様子を窺おうと振り向いてみるも、ぴったりと般若に頬を寄せるなまえの表情は判らない。
無言のままのなまえに困惑した顔を浮かべながらもされるがままにされていると、背中に擦り寄ったなまえの両腕が一層強く真島に抱き縋る。
パタンと冷蔵庫の扉を閉めて改めてなまえの方へと首だけで振り返ってみれば、少し俯き加減のなまえの眉根には苦悩の皺が刻まれていた。


「どないしたんや、なまえチャン…?」
「真島さん…、」


最近どうして、触れてくれないんですか…?
消えてしまいそうなほどか細く震える声に問われ、途端に真島は言葉をなくす。
確かに、先日勝手になまえのベッドに潜り込み、その翌朝に涙に濡れたなまえに触れ、口づけを交わして以来、真島は自らなまえに触れようとはしなかった。
なまえが望むまでは自ら手を出すまいと決めていたのは、真島にとってなまえがプラトニックな面で本当に愛おしいと想っている事を暗に伝えたかったからかもしれない。
だがその行為が裏目に出、なまえを不安にさせていたのだと言うことを、ここにきて真島は嫌になるほど痛感していた。


「なまえ…ほんなら、抱いてもええんか?」
「っ、…」
「それは、なまえが俺を欲してくれたと受け取ってええんやな…?」
「やっぱりもう…、いいです…から」
「いや、ちゃうんや…なまえの口から聞きたいんや。お前にもっぺん、俺が触れてもええってことやろ?」


なぁ、頼むわ…ちゃんともっぺんだけ、なまえの言葉で俺を求めてくれ…。
静かになまえに語りかける真島は、敢えてなまえから目を逸らした。
それは、なまえの目を見るのが怖いという胸の内の表れだったのかもしれない。
じっと冷蔵庫の方に視線を投げたまま腹部に回されたなまえの手を握りしめ、真島はただなまえの言葉を待っていた。


「真島さんに…、必要とされたい、っ…」
「なまえ…」
「いっぱい触れて…、傍に居させて…」


ぐるりと身体を反転させると、真島の両腕はなまえを強く抱き締めた。
小さな身体を壊してしまうほど強くなまえを抱き締めながら、真島は歯を食いしばるように唇を固く結ぶ。
なまえの与えてくれる言葉の一つ一つが胸に沁みて、不覚にも苦しさを覚えるほどであった。
不思議な痛みの走る心臓に戸惑いながらも、真島の腕は確かになまえを包み込んで離さなかった。


「お前が俺の傍に居るのは…当たり前の事やと思っとったんや、ずっと」
「真島、さ…」
「その当たり前のもんが無くなってもうたら、俺はもう…生きて行かれへんわ」


今日は、たっぷりお前を堪能させてくれ…。
強く抱き締めたなまえの耳元でそう告げると、背中に回された腕に真島は優しく包み込まれた。
微かに緩めた腕の中、静かに見つめ合ったままそっと顔を寄せ合えば、真島の唇には柔らかな感触がふわりと重なり合う。
ゆっくりとその唇を離してみれば、少しはにかんだ笑みを浮かべるなまえに真島の胸が小さく跳ねるのだった。

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