Lust | ナノ

大人の世界
極度の緊張から、なまえの心臓は張り裂けんばかりに脈拍数を上げていた。
仰向けに倒れたベッドの上、見つめるすぐそこには真剣な表情の秋山の瞳があった。
両肘を突き、少しだけ上半身を起こした状態のなまえの太腿の上に跨るように、秋山の身体が折り重なってくる。
熱の籠もった吐息が秋山の唇から零れ落ち、それだけでなまえの身体が麻痺したように動きを止めた。


「なまえ…」
「秋、っ…ァ」


なまえが秋山の名を呼ぶより先に、その唇が塞がれる。
中途半端に起き上がらせていた上半身が完全にベッドに沈むと、秋山の掌がなまえの前髪を払い除けた後で優しく頬を包み込んだ。
ただ触れただけの唇の感触が酷くリアルに伝わる。柔らかく、そしてとても温かだった。
そっと押し当てられるだけの口づけが為されるたび、なまえは戸惑い、目をきつく閉ざして縋るように秋山のジャケットの端を掴まずには居られなかった。
額に掛かる秋山の前髪の感覚がくすぐったくて、それ以上に触れ合うだけのキスが心地良くて、これしきの刺激にすらもなまえは吐息を漏らしていた。


「ゴメン…なんか緊張してる」
「私、も…です」
「…こういう俺は、格好悪い?」
「そんなこと、」


ふるふると首を振って否定してみせると、秋山は少しはにかみながら再びなまえに口づけを落とした。
なまえの頬を包み込むように触れていた手が少しずつ首筋を伝って下りてゆくと、鎖骨をなぞりながらゆっくりとなまえの身体のラインを撫で始める。
秋山の指が太腿を通ると、なまえの身体がびくりと跳ねた。


「怖い?」
「…少し、だけ」
「じゃあ…こっちはまだ触らないから」


再び指先がなまえの身体を上り始め、太腿から胸の膨らみへと場所を移動する。
秋山がキスを再開するのと同時に、掌が緩々となまえの胸を服の上から揉みしだき、その緩やかな刺激になまえは頭が眩みそうになった。
微かに声が漏れた隙になまえの唇を割って秋山の舌先が押し込まれ、まるで探るように咥内を掻き回す。

「んァ…きやま、さ…」
「なまえ…っ、」

徐々に口づけが深いものへと変わりはじめても、なまえの身体に触れる秋山の指先はどこか遠慮がちなものであった。
その触れ方があまりにも臆病で、なまえはもどかしさすら感じてしまうほどである。
ただなまえが抱いていた行為に対する不安が薄れはじめてきたのは、ひとえに秋山のスローペースの愛撫のお陰でもあった。


「ねえなまえ…」
「っ、はい」
「キス…気持ちいい?」
「、もち…です」


答える事すら気恥ずかしくてならないといった状態で、なまえは秋山の視線を避けようと彼のジャケットを強く握り締めながら引き寄せた。
秋山の胸元に染まった頬を隠してしまいたかったのだが、秋山はそれを簡単には許してはくれなかった。
なまえの両脚を跨いだ膝で引き寄せられる上半身を立て直すと、恥じらうなまえの額に音を立ててキスを落とした。


「…安心した」
「え、っ…?」
「いや…なまえが気持ちよくなってくれててさ」


なまえの身体に掛かる重みが僅かに増して、秋山の身体がぴたりと密着する。
強く抱き締められると、秋山の香りが今まで以上に鮮明になまえの鼻腔を刺激した。
仄かに混じる煙草の香りに誘われるように秋山を抱き締め返すと、するりと服の裾を割って伸びた彼の手が直になまえの肌へと温もりを求めた。

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